*.**.…Episode 3….**.** ページ3
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(…コイツら!)
私は一瞬にして彼らの目的を理解すると、男が動くより先に行動した。
お嬢の腕を掴んで男達の方へ全力疾走した。
あまり使いたくない手ではあったが、今更そんなことは言っていられない。
私はこっちへ近づいてきた男の頭上を全力疾走した勢いで思い切り蹴り上げ、お嬢を脇腹に担いだまま宙に飛び上がる。
「きゃっ…!」
お嬢は驚きのあまり声を上げ、段々離れていく地面に混乱していった。
私にこれ程の運動神経があったなどと知らない不良共はそれに呆気にとられ、私は暫く固まっているのを彼らの頭上を跳びながら眺める。
ーー中々の評価もつかない阿呆面ね。
地面に着地するとお嬢の手を引き、そのまま男達の背後を走り抜ける。
一刻も早くココを出なければ。
だが我に返った男が一人、また一人と増えていき、「追えー!」と言いながら追いかけてくる。この世でこれ程のホラーな場面があるだろうか?…ないわね。
「の、信女さん!あの人達何者なのですか!?何故追いかけて…」
「今は話してる時間はないわ。とにかく追いつかれてはダメ…!怖くても足を止めないで」
だが、運というものは突然切れてしまうもので私は走るスピードを上げすぎて、地面の凸凹につまずいて転倒してしまい、手を繋いでいた為お嬢もつられて転んでしまった。
ーーーーーーーーまずい。
私はこれ以上ないほどの不運に唾を吐きながらもどんどん距離を縮めてくる男達を睨むと、何も考えずお嬢を立ち上がらせて逃げる様背を押した。
「逃げて!!早く…!貴方だけは、お嬢だけは絶対に逃げ切らないと意味がない…!!」
お嬢は涙を目尻に貯めながら、ぶんぶん首を振って私の手をギュッと握る。
「嫌です!嫌よ、信女さん…!そんな事言わないで!!貴女も一緒に…!」
「今貴女が果たさなくてはいけないのは無事に家に帰る事よ…!」
「…っ!!」
私は慣れない大声を上げながら必死にお嬢を説得する。未だに男達は追いかけてくる。
お嬢は私の叫びにハッとして、泣くのを止める。
「お願い…、今すぐ逃げて。私は戦える。…でも、貴女は戦えない。だからこそ私は貴女の剣になり盾になる。それに…貴女は強いわ。私なんかよりもずっと……周りに愛され必要とされている…」
不良共はまた距離を縮めてきている。
お嬢は私の声を一つも聞き逃さんと、必死に涙をこらえて私の手を握りしめ耳を傾けていた。
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威信 - すごく面白かったです! (2020年1月21日 19時) (携帯から) (レス) id: effeeaf02a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:交差点プリン | 作成日時:2017年6月21日 0時