*.**.…Episode 4….**.** ページ4
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「だからこそ貴女は帰らなくちゃならない。だからこそ貴女は下の者を踏み越えても前に進まなきゃならない。…大丈夫、私はきっとまたお嬢の元へ帰りますから」
もうあと15mという距離。私はお嬢の華奢で綺麗な掌をギュッと握り返した。
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ーーーー痛むのは何処だろうか。何の痛みだろうか。心?身体?…分からないんだ…
「ーーーーー……行って…!!!」
一瞬のことだった。私は声を振り絞りそう叫ぶとドンッと力強くお嬢の背を押した。その反動でお嬢はよろけながらも懸命に足を動かす。
……これで良かったのよ。後はお嬢が無事に屋敷に帰れば何も心配はいらない。
だから____________________……、
私はお嬢とは逆の方向へ立ち上がる。目の前には変態ゴミカス野郎共。
私は逃げもせず、進んでもいかず、俯いてただそこに立っていた。私の行動に男達は走っていた足を止め、今度はニタァッと口角を上げながらゆっくり近づいてくる。
私は何の表情も表さず、ただ前髪で目元を隠していた。
「…何のマネだァ?もう片方の嬢ちゃん逃してたった一人で何しようってんだ」
「あの人と一緒に危険になるくらいならお嬢を逃してその危険を私一人で背負う方が効率がいいわ。………ズッタズタに叩き斬ってあげるから…」
私の幾重にも増して強い殺気に幾人かの男達は「…ひっ」と、恐怖を覚えたような顔になる。私はその恐怖をなんとか上手く利用して善戦しようと試みたが……
ある一人の男だけは目の前の私の殺気に目もくれず、平然と笑っているのだ。
「危険を一人で背負った方が効率がいい、ねェ…。確かにあんたの方が強そうだ。だが、所詮女には変わりねェ。アンタ一人を襲った方が早ェがこっちだって色々考えがあるんだぜ」
「…!?」
私はあることに気が付いて息を詰まらせながらハッとして前を見上げた。そして初めて男の顔を見る。
男はこの中でも一番体格が良く、最も威厳を持っていると感じた。
…おそらくコイツが長であるんでしょうね。
「例えば……………、アンタのその大事な嬢ちゃんを襲う用の仲間を反対側に付けとくとかな…」
男の発せられる言葉と共に瞬時に危機感が身体を廻り、一瞬スローモーションになったかの様にお嬢の逃げた方を振り返る。
「へ、無防備過ぎだぜ嬢ちゃんよォ。ちっと甘かったな」
「…っイヤ!!離して…!!」
「…ッ!!!」
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威信 - すごく面白かったです! (2020年1月21日 19時) (携帯から) (レス) id: effeeaf02a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:交差点プリン | 作成日時:2017年6月21日 0時