24話 ページ25
言い過ぎたか、と思った時にはもう遅い。
けれど、言うしかなかった。
言わないと、またこの女は俺を守れてよかった、俺が幸せそうでよかったなどと抜かして、俺の前からいなくなってしまう。
「生きたかったに決まってるでしょ!」
Aの劈くような叫びが路地裏に響いた。
ポタポタと溢れる涙は、衣服を濡らし、地面を濡らしてゆく。
「銀時が幸せそうなのは嬉しいこと、だけど。
もし私が生きてたら、とか隣で笑えたんじゃないの、とか歪んだ事ばっかり思い浮かぶ。
私、もう死んじゃったのに。」
“死んでしまった”
それは覚悟していても、実際現実として突きつけられると辛いもの。
小刻みに震える陶器のように白く、助けたAの肌を見て、Aがこの世の人間でない事を再び認識させられる。
「歪んでねぇよ。
自分が幸せになりたいなんざ、誰だって思う事なんだよ。
だから、教えてくれよ。
お前がやり残した事を。
お前はさっき、性懲りも無く毎年ここにこうやってきてたって言ったよな。
つまりAは攘夷戦争からの10年間、いつだって俺に会えたはずだ。
それをわざわざ10年越しの今日、俺の目の前に現れたってことは___」
溢れた涙が、地面に染みを作る。
けれど、この暑さでは少し時間が経てば、その染みも蒸発して消えてしまうだろう。
それが、Aがここにいるという事実を、Aとともに連れ去ってしまいそうで怖かった。
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凛 - とても良かったです! (2022年12月20日 19時) (レス) @page36 id: 0db889cc25 (このIDを非表示/違反報告)
けんそう(プロフ) - 岩長漆@三色団子と朧大事さん» ありがとうございます!そういったコメントが一番の励みになります!今後も皆さんにお話を届けられるよう頑張ります! (2018年6月11日 8時) (レス) id: aaf4aecbc2 (このIDを非表示/違反報告)
岩長漆@三色団子と朧大事(プロフ) - 突然失礼いたします、岩長と申します!けんそう様の作品読ませて頂き、とても感動しました!次作の方も頑張ってください!応援しております! (2018年6月10日 22時) (レス) id: c1dc633bc5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:けんそう | 作成日時:2018年2月10日 20時