【文スト】罪の糸 (ページ3)

今日:5 hit、昨日:0 hit、合計:2,580 hit

序章Ⅱ ページ3

そんな男を、槙島は小さく息を吐き立ち上がる。そして、その忙しなく動く体を足で踏みつけ動きを阻む。

そしてまた、くつむとその顕になったナイフの切っ先をゆっくりと男を仰向けにさせ喉元に突きつける。

ナイフを突きつけている張本人は、それは愉快そうに頬を緩ませ笑んでいた。

貴「君には、コレから選択肢を与えよう。生きるか死ぬかの、選択肢だ。もしも、当たったら解放して上げよう」

そう、緩やかな声が男の鼓膜を震わせた。其れは、甘美で残酷な声であった。

貴「まぁ、別段難しいことは聞かないさ。只、私の云う質問に答えてくれればそれで良い。どうだ、やってみる価値はあると思うが？」

槙島が、そう聞くと男はこれでもかと云うほどに頭を振りガクガクと震えていた。

貴「宜しい、ならば聞こう。……君は、この世界をどう思っている？」

－－静かに、問うその声は無機質だった。表情は、先程とは違い笑顔から無になっていた。

だが、猿轡をされている男は喋ることすらままならず呻き声を上げるのみだった。

貴「嗚呼、済まない。君には、コレをしていたんだったね。今、外そう」

そう云い、慣れた手つきで猿轡を外す槙島。猿轡を外された男は、一気に入り込んでくる酸素に噎せていた。

貴「……さて、それでは君の答えを聞こう。この世界について、君の意見を聞かせて欲しい」

そう云うと、乱れた呼吸を整えた男はカチカチと鳴る歯の音と共に静かに声を振り絞りながら話し始めた。

男「こ、この世界は貴女のような"犯罪者"が居て良い場所では無いと思いま、す……。世界は、秩序と平穏が満ちてなくてはならない」

そう、振り絞った声が発するのは紛れもなく"正しい"結論だった。けれど、槙島はまた小さく瞳を細め持っていたナイフを構えた。

貴「残念だ、君は私の望む答えを出せなかった。不正解なその答えを、云った君には仕置が必要なようだ」

男「あ、あ、何でッ……！！答えたら、俺を助けてくれるはずじゃあ！！」

槙島は、下でギャンギャンと喚き立てる男に心底冷えきった瞳で見下ろした。

貴「君は、何か勘違いをしているみたいだが……。私は、私の"望む答え"を云ったら解放してあげようと云ったんだが？」

男「そ、そんなっ！！そんなの、あんまりだ！！」

そう叫び散らす男に、槙島は興味を失ったように立ち上がり男の体を蹴り上げた。

そして、先程よりも冷たい視線で転がる男を静かに見やった。