84話 全てを知ってなお ページ44
Aside
「…先輩は変わらないですね」
「せやねん、興奮すれば止まらんし我を貫き通す。それがゾムの持ち味やけどね」
ゾム先輩はずっと私に期待してくれていたんだ…
「期待に、応えないと」
「…やっぱり、Aは笑った方がええな」
そう言うオスマン外交官の表情は辛そうに見えた。かと思えば急に私に向かって頭を下げていた。
「…オスマン、外交官……?」
「ホンマに今までごめんな。いつも目の前の事ばっかりでちゃんと周りが見えてなかったんや…外交官、失格やな」
食堂にいる皆は驚いていた。
「…頭をお上げ下さい」
「上げられへんよ、俺は…自分が間違った選択をしてる事に気付いててもなお、レティの味方で在ろうとしたんやから」
…どういう事なんだろう。
「…外交官やってると相手の考えてる事とか嘘も見抜けるようになんねんな。…俺はレティがどんな気持ちで、考えで俺たちと同じ時を過ごしてきたのか……
どんな嘘をついていたのか分かってたんよ」
理由を聞くのは野暮だろうか。
それでもオスマン外交官の口から直接聞きたいという自分の我を捨てられない。
聞くべきか迷っている私に気づいたオスマン外交官は眉を下げて力なく笑って言った。
「…俺に隠し事はもうせんでええよ。聞きたいことあるなら……全部聞いてええから」
聞いて欲しいと言わんばかりの言い回しを理解した上で、私は聞くための覚悟決めた。
「…どうして、レティさんの事を信じていたんですか?」
ニヒルに微笑んだオスマン外交官が言葉を紡いだ。
「…レティが聖女だから……最初はそれだけの理由のはずだった。…でも、いつの間にかなぁ…惚れて……
…いや、ちゃうわ。レティという“聖女”と話してる優越感、自分が好きやったんよ。悦に浸ってたかった……
誰もが憧れている聖女と話してる俺は凄い。
そう、思いたかってんな」
再び頭を深く下げた外交官の肩に手を置いて無理やり顔を上げさせた。
初めて近くで見たオスマン外交官の瞳は先輩とはまた違った綺麗な翡翠の宝石だった。
「…オスマン外交官は、もう大丈夫ですね」
「え…?」
「…だって、間違いに気づけたんだから」
間違いをそのままにするより、気付いて反省する方がずっと良い。
間違いをズルズル引きずるのは嫌いだから…
「…ここからまた始めればいいんですよ」
オスマン外交官は、眉を下げて優しく笑っていた。
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ポンコツ - めっちゃ面白くてどんどん読めました!マジ神作! (2021年5月15日 8時) (レス) id: 325f452e67 (このIDを非表示/違反報告)
隻狼姫(プロフ) - えっ、おすすめに出てきたから見てみたら面白くて一気読みしてたんですけど、まさかお気に入り登録してるtwst小説の作者さんだったとは…そりゃ面白いわけですわ… (2020年10月7日 21時) (レス) id: efc986c11a (このIDを非表示/違反報告)
暁郗 - 次回が最終回…だと…!?うああああ……待ちきれないぃぃい…。むっちゃ楽しみです!! (2020年9月26日 0時) (レス) id: 14cb33816d (このIDを非表示/違反報告)
kiito - あぁー最終章に突入してしまった〜!嬉しいけど寂しい(´;ω;`) (2020年9月21日 22時) (レス) id: 840ffe907d (このIDを非表示/違反報告)
ぽんちゃ(プロフ) - レティまさか、、、味噌汁に*を、、!?だから夢主は*に関する本を教授のいる図書室から借りてキッチンで*を作ってから飲んで耐性を付けたんですか!!?(*←のところ合ってるか分かんない、、) (2020年9月16日 20時) (レス) id: c3d604437a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:彼岸桜+α | 作者ホームページ:http://uranai
作成日時:2020年6月6日 9時