【マギ】願い事 Ⅱ (ページ26)

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61話ページ26

ゆらりゆらりゆっくり揺れる寝台の上で
小さく蹲(うずくま)っていた私。

「…本当に良かったのですか」

部屋の外から聞こえる
ジャーファルさんの声

「もう、決めましたから…」

返事を返した瞬間に

「ちょっ、マスルール！いくら気の知れた仲間とは言え…女性の部屋ですよ！」

大きな音がして扉が開く

「…行きますよ」

「えっ！？」

半ば引き摺(ず)られる様にして
甲板の上にやってくると

王国の国民たちが
この船に向かって手を振っていた

一番前には
こちらに跪(ひざまず)く金髪の人物の姿もある

私はもう王女じゃないから
そんなことしなくていいのに…

もっと…ちゃんと私が
アリスの事を見ていれば…こんな風に別れる事は無かったかも知らないのに…

「まだ泣くなよ。
最後くらいは、自国の民に笑顔を残してやれ」

隣に威厳たっぷりに立つ彼に
背中を優しくトンと押される

「…ごめん、ありがとうシン」

涙を拭って
大きく手を振った

相も変わらず
アリスは顔を挙げない

それでもなんとなく、
私には分かる。

…私の気持ちはちゃんと伝わったのだと。

.

.

.

マスルールside

「マスルールダメですよ」

「…分かってます」

ジャーファルさんは分かってないでしょうと言わんばかりに苦笑いを浮かべた

俺の視線の先に居るのは

さっきからシンドバッドさんと2人きりで楽しそうに談笑しているAさんの姿

気付かないうちに
険しい顔つきで見つめていたようだ。

「マスルール、少し2人で話をしませんか？」

「…俺と？」

「はい」

ジャーファルさんと2人で話す時は大方説教だが、今日はそんな雰囲気では無さそうだ

「マスルールは、これからどうするつもりなんです？」

「これから？」

「ええ。…Aの事ですよ」

ジャーファルさんの口から“A”と言う単語が出てきただけで心拍数が上昇する

「俺はどうもしません」

「そんな事をしていては、シンに取られるのは目に見えているでしょう？」

「…Aさんが選んだなら俺はそれでも良いっすよ」

「ハァ…そのように受身でいるから進展しないのですよ。
私からすればAは誰かを待っている様に見えますが」

待っている…？

＿＿＿＿誰を？