【マギ】願い事 Ⅱ (ページ25)

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60話ページ25

寝台の上で静かに
目を覚ますアリス

「A様…？」

「久しぶりね」

「…はい」

ゆっくりと身体を起こした彼は
今までとは別人の様に窶(ﾔﾂ)れていた

「メルカルトは…？」

「こちらで預かっているよ」

「シンドバッド王…何故？」

「目覚めてすぐで悪いんだが、今から君と取り引きをしたいと思ってる」

「取り引き？」

アリスのこめかみがピクリと動く
明らかに嫌そうな顔をしていた

「なに、簡単な事さ
君はメルカルトを手放さなくても良いし
地位も剥奪されない

ただ、その見返りとして
Aは、俺達と共にシンドリアに帰り、
そして俺達はこの国と貿易を結ぶ

君にとってもかなりの好条件だと思うんだが？」

「…何故、メルカルトを取り上げ無いのです。私が貴方たちを殺すかも知れないのに？」

「ああ、その件なんだが。
Aの精霊の力を行使させて頂くよ」

シンが目で合図をする

「私の精霊でメルカルト自身に“縛り”をかけたの。私たちとの契約を破ったらすぐに消滅するように」

「消滅…？」

「契約の内容は2つ。この国を守り抜く事、精霊の能力をこの国の人間に行使しない事。…わかった？」

私の言葉を聞いて
アリスが目を丸くする

「…それだけ？」

「ええ。私は…もうこの国には戻らない
だから、貴方に私の故郷を守って欲しいの。

…この国で一番賢くて頼れるのは貴方だけだから」

私が言い終えると

一筋の涙がアリスの頬を伝い落ちた

「…ごめんなさい。
私は、貴方を裏切ったのに…」

「…何の理由もなしに貴方がそんな事をするとは思えないもの。

でも、貴方を許したわけじゃないから、勘違いしないで」

「はい」

「じゃあ、今日、出国と共に金属器を返すから…時間になったら港に来なさい」

「かしこまりました」

涙を流し続けながら
アリスは私の前に跪く

それに背を向けて部屋を出る

…私も涙を堪えるのは限界だった

「ッ…」

自室に戻ると寝台の淵に顔を伏せて
静かに泣いた

『A様を守る為なら僕の命なんて惜しくないよ』

『だーかーらー、そっちじゃないっていつも言ってるのに！！』

メルカルトの術が溶けてから

封じ込まれていた
たくさんの幼少期の思い出が蘇って来た

昔は本当に…好きだった

『僕、A様のこと大好きだよ』

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＿＿＿＿さようなら、アリス。