【マギ】願い事 Ⅱ (ページ13)

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48話ページ13

あの不思議な男は現れないまま
数日が過ぎようとしていた

今晩は少し曇っていて
吹く風もどこか湿っぽい

＿＿＿＿もう、あの人は現れないのだろうか。

あの男は私の思い出せない過去を
知っているはず…

アリスは私が自分で
記憶に封をしたと言っていたけど

…今の私は封をした頃の私とは違う。

知りたい＿＿＿＿自分の過去を

そう願った時

まるでこの時を待っていたかのように
あの突風が吹き込んだ

「…待っていました」

振り返るとそこにいたのは
あの男＿＿＿＿とかなり露出の多い女性…

「…突然の訪問と、前回の非礼をお許し下さいA様。」

「気にしていないわ。それよりも…その人は？」

「私はヤムと申します。」

ヤム？

「ヤム…と？」

「私はシン」

ヤムと、シン…偽名かしら？
まあいいわ。

「それで今夜は何をしに？」

「貴方の記憶を戻す方法を探しに参りました」

「…シン、貴方は私の大切な人だったのね？」

俯くシンの隣で
ヤムが気まずそうに目を逸らす

…もうしかして、ヤムも。

「…はい。」

「ごめんなさい。絶対に思い出すから…

それで、今から何をすれば良いの？」

「手をこちらに」

手を差し出すとヤムはそっと
私の手を包み込むように自身の手を重ね合わせた

そして何かを感じ取ったのか

「椅子に座って頂いて良いですか」

そう言って今度は私の頭上に手をかざした

そして無言で一礼すると

シンとヤムは何やら
目を合わせて頷いた

「どう？」

「…どうにかなるかも知れません
ただ、少しお時間を頂きたいのですが」

「構わないわ」

…どうにかなるんだ！

「それでは、私たちの事はどなたにもお話なさらないように。他言なされば、もう記憶は戻らない事と心得てください」

「ええ。もちろん！…ありがとう」

「いえ、こちらこそ」

微笑みかけると二人とも
返すように微笑んだ。

そして、瞬きをした隙に二人の姿は視界から消えていた