21片 ページ23
弟の顔をしたその人を捨て置く程
私は冷たい人間でもなかったから
一先ず、落ち着くまで
背中を擦って宥めた
これからどうしよう?
それにここは何処だろう?
…シンドリアでないことは間違いないけど。
「ねえさん」
ずずっと鼻を啜って
弟が私の腕を解く
「2人で人生やり直そう。周りの人間に、邪魔されてばっかりだったけど…俺達はもう大人になった。だから…きっと____」
「ねえ、レイル」
彼の言葉を遮るように言葉を放つ
「私は、今までの人生を無かったことにはしたくないの。やり直すことなんて、出来ない」
怯えていたこの前とは違って、はっきりと、自分の意思を彼の目を見て告げる
するとどうだろう、
彼は何も言わず私に背を向けてしまった
「レイル。私をシンドリアに帰して」
「…」
「お願い……」
薄暗い部屋に
いつ降り出したのか分からない雨音が響く
「…俺は、俺は……」
細い肩が小刻みに震えていた
「シンドバッドが昔から大っ嫌いだった」
…えっ?
振り返ったレイルは
また、目に涙を浮かべていて
今にも泣き出しそうだ。
「俺さ、姉さんが居なくなってから、ヤバイ奴らに目をつけられたんだ。ただ、飲ませれば上機嫌になるから、いつも飲ませてたんだ。でも、それがシンドバッドに見つかって俺は…終わった。あの男は信じてくれなかった。俺を捨てたんだ。」
…私が夢で見たのと違う?
シンドバッドが人を見捨てるような真似をするわけが無い。
ましてや私と約束したのだから尚更。
「それから金が無くなった俺は家も全部奴らに盗られて、何もなくなった。そんな俺の所に政府の役人が来て、姉さんが帰ってきたら殺せって言った。殺せば生活は保証するって。アイツら姉さんをマグノシュタットのスパイなんじゃないかって疑ってたんだ。」
スパイ…?
「だから、俺は殺した振りをして姉さんと逃げようとした。でも、シンドバッドが現れて俺を…」
顔を顰めながら腹部を抑える
私には、
それが演技には見えなかった。
ここまで知ってるって事は
レイルで間違いない。
だけど…弟の言っていることが本当なのか確かめる術を私は持ち合わせていない。
彼の言葉を信じて、いいの?
いや、でもレイルは…敵よ?
だけど、
そもそもあの夢は、何…?
あれが見せたのは本当に過去…?
………落ち着け、私。
混乱しているのを気取られぬよう
短く息を吐いて、目を閉じた。
92人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
紅妃(プロフ) - 完結おめでとうございます。いつも楽しみの一つにさせてもらっていました。これからの活動も応援しています。 (2018年3月14日 9時) (レス) id: d4608e4b4b (このIDを非表示/違反報告)
はな - めっちゃおもしろいです!続き早く読みたい。。!!夜猫さん、この小説のことわすれないで〜〜〜ヾ(・ω・`;)ノ (2017年1月10日 19時) (レス) id: 6a8fed615c (このIDを非表示/違反報告)
月影みこと(プロフ) - すごくおもしろいです。続きがとても気になります。応援してます! (2016年11月21日 23時) (レス) id: 9705d14001 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:夜猫 | 作者ホームページ:https://twitter.com/tutimikado12113
作成日時:2016年10月11日 21時