13片 ページ15
目を覚ますと私は
いくつもの扉に囲まれた
一つの部屋の中にいた
不意に
____これは夢の中だ。
と悟る
「貴方は…」
私の服の裾を引く小さな女の子
手をひかれるがままついて行くと
一つの扉の前にたどり着いた
「ここに、何かある?」
女の子は無言で
鍵を差し出した
「開けて、入ればいいの?」
無言で女の子が頷く
言われたとおりに
鍵を開けて恐る恐る扉を開く
____真っ白で何も見えない
踏み込めないでいた私を
後ろから女の子が押す
一歩踏み込んだ途端に
扉も部屋も消えた
その代わりに現れたのは
懐かしい、シンドリアの王宮。
私は廊下に立っていた
誰にも見えていないようだ
ガチャッ
少し先の扉が開いて
出てきたのは少し若いシンドバッド。
険しい顔をしていた。
「ねえ、シンドバッド!また、なにか隠してるでしょう?…お願い教えてよ。」
後を追って出てきたのは昔の私?
「君を傷付けたくないんだ」
「うそつき!」
目に涙を浮かべて走り去っていく私を
苦しそうな瞳で見つめるシンドバッド。
.
.
.
「すまなかった、A。全て、話すよ」
苦しそうな、苦しそうな顔で
彼は言う。
心の底から言いたくないことなのだと、
今の私でも解る
「落ち着いて、聞いてくれ…」
「うん…」
「…Aの、弟を、殺したのは…俺だ」
「えっ…?」
「…俺はずっと嘘をついていたんだ。
すまない」
「…どうして、殺したの?」
「それは…」
「私が自分よりも、弟を大切に思ってたの、知ってたよね?」
「ああ」
昔の私の表情が醜く歪む
たちまちシンドバッドの胸元を掴んで
泣き叫んだ
「____どうして?」
黙り込むシンドバッド。
「答えて…!」
「すまな…」
バシッ
シンドバッドの手を振り払う私
「もう、顔も見たくない」
キッと睨みつけると
私はそのまま彼の部屋を後にした
残されたシンドバッドは
心を無くしたように
ボーッと1点を見つめていた。
そしてそのまま
頭を抱えてしゃがみ込むと
綺麗な石造りの床に
1粒の水滴がこぼれ落ちた
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紅妃(プロフ) - 完結おめでとうございます。いつも楽しみの一つにさせてもらっていました。これからの活動も応援しています。 (2018年3月14日 9時) (レス) id: d4608e4b4b (このIDを非表示/違反報告)
はな - めっちゃおもしろいです!続き早く読みたい。。!!夜猫さん、この小説のことわすれないで〜〜〜ヾ(・ω・`;)ノ (2017年1月10日 19時) (レス) id: 6a8fed615c (このIDを非表示/違反報告)
月影みこと(プロフ) - すごくおもしろいです。続きがとても気になります。応援してます! (2016年11月21日 23時) (レス) id: 9705d14001 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:夜猫 | 作者ホームページ:https://twitter.com/tutimikado12113
作成日時:2016年10月11日 21時