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あぁ、そういえば。

 今年の夏に、面白い子達と会ったわね。たしか、そう。それぞれ四人組の、二つのユニット。

「紫之先輩、こんにちはァ!」

 あら、噂をすれば。この子は『あいら』、だったかしら。

「白鳥くん、こんにちは。今日はどうしたんですか?」

「事務所のお仕事、手伝ってきた帰り!……あれ、先輩、それなァに?」

 不思議な抑揚はなんとなく耳に残って、すっとどこかに消えていく。不思議な人だけれど、実のところあまり『アイドル』としてうまくはいっていないらしい。

 そうとは思えないくらい、良い子で可愛らしい子たちだと思うのだけれど……人間と人形は、違うものね。

 人間には人間の事情なんてものがあるんだものね。少し寂しいけれど、それが現実。

「綺麗なお人形。外国の?」

「多分、そうです……かね?詳しいことはに〜ちゃん……持ち主に聞いてみないと。今度聞いてみますね」

 そういえば、今日の昼間だったかしら。『なずな』が帰ってくるのは。

 そうぼんやりと考えたら、心なしかふわりと頭が軽くなったような気がした。



「……はぁ」

 と、間抜けたような、漏らすような返事をしたのは『なずな』だった。

 正直、あまり話は聞いていなかったのだけれど……どうかしたのかしら?

 それと、話し相手の子。直接見たことはなかったけれど、この子もアイドルをしているらしい。

 名前はおろか顔すらあまり見たことがないという子が増えてきたのは、夢ノ咲を出て以来よく訪れるようになった変化みたいなものね。

「……あの、急いでるので……?」

「あぁ、これは失敬!なかなか見かけない方を見つけたもので思わず声をかけてしまいました!」

 ……なんだか、不思議な人ね?

 夢ノ咲にあるようでない雰囲気をまとっていて、そのあとになってようやくポスターで彼の姿を見つけたわ。

「……無理させちゃってごめんな。もうすぐ、お師さん帰国するって聞いてるから、都合が合ったら会いに行こうな」

 ふと、『なずな』が口にしたその言葉。


 あら、『しゅう』が?

 ほんとうに?


 全身でそれを表現したいけれど、私は相変わらずニコニコと薄い柔らかな笑みのまま。

 これは少し残念だけれどしょうがないわね。でも、もしかしたら、会えるのかしら。また、彼らに。

 大切な時間をくれた、彼らに。

 『Valkyrie』に。

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作者名:竜花 | 作成日時:2020年7月8日 23時

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