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Hope ページ13

「一年前、覚えてますか?」

 空を見上げたまま、彼女は突如口を開く。一年前の葛藤はもう、忘れることなんてないだろう。

「私、あの子とほとんど関わりはないけど……話は全部聞いています」

「そっか……」

「アイドルって大変ですよね。それに、大学だって。それと、あの子のことも。」

「……あぁ。」

 彼女に、心を見透かされている気がした。案外気のせいでもないのかもしれないくらいに、彼女の言葉は一つ一つおれに重く刺さる。
 泣きたくなるような気持ちだった。Aが特別だからってものじゃない。たとえ特別な存在じゃなくても、おれは今頃こうして悩んでいるだろう。
 それだけ、大事な存在であり、悩みの種でもあるのだから。

「そこで!」

 ふと、あんずは声をあらあげる。何かと思えば、今度はある方向に向かって歩きだした。

「おい?」

「先輩、私思ったんです。行きましょう!」

「え、ちょっと……どこいくんらよ〜!?」



 なんだか、胸騒ぎがした。それをいち早く勘づいた『そら』はまるで赤子をあやすように、私を撫でる。

「終わらせたりしないって……言うてもどうするつもりやの?勿論できることならおれも協力するんやけど……」

「う〜ん……じゃあ、あなたや宙たちはなんだと思いますか?」

「えっ?うーんと、人間?」

「そうじゃなくて!もっと、こう、あるじゃないですか?」

 うーん、と考える『みか』。いつの間にか、カウンターから聞こえてくる声は静かなものになっていたわ。
 そっとそこを盗み見れば、こちらをまるで保護者のように暖かい目で見ている『りんね』たちと目が合ったような気がした。

「……せや、ここにぎょうさんおるもんな。おれも、きみも。お師さんやなずな兄ィも。キラキラしたアイドルが!」

「そうです!アイドルなら歌いましょう、みんなに、Aに笑顔を届けましょう!」

 満面の笑みで立ち上がった『そら』。曇りのない瞳はしっかり『みか』を見据えていて、右手を差し出した。
 『みか』はそれを手に取り、照れくさそうに笑みを浮かべる。

「あの〜……盛り上がってるとこ悪いっすけど、ご注文の品っす〜」

「あ、おおきに」

 みんな、なんだか楽しそう。

 そう思った矢先、窓の向こうで見覚えのある背中を見たような気がした。

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作者名:竜花 | 作成日時:2020年7月8日 23時

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