月下美人/リーマス・ルーピン ページ10
「やば〜また教科書なくした」
「タダじゃないんだから、もうちょい丁寧に扱ってよね」
なくしたのに、丁寧に扱え。
リーマス・ルーピンは横から聞こえる雑な独り言に暇潰しを見つけた。
今日の魔法史はレイブンクローとの合同授業だ。
「どうかした？教科書ならここにあるよ」
A・ガルシアは流行りのバレイヤージュでアッシュがかった茶髪から綺麗なブロンドベージュのような色のグラデーションにした髪を、毎朝大きくウェーブ巻きにしてから授業を受けている。
そのマグル様式で生活していると言っても過言ではない彼女の事をよく思っていない生徒は、残念ながら山ほどいた。
「素敵なお誘いね、お言葉に甘えて失礼するわ」
きちんと誘えば、突然丁寧な喋り方をするところも、また彼女らしくていい。
気取ったのとはまた違う、品のある喋り方も出来るのだから、いつもそうしていればまた周りの対応も違ったのではないか、と、まるで一人きりになったような気持ちでリーマスは思った。
実際、ジェームズは勝手にリリー・エバンスの隣に座ってしまったし、シリウスの隣には昨日とまた違う女子が座っているし、ピーターは未だに教室に入っていない。
リーマスは五年生になってから、より自由になった親友たちに、少しの疲弊を覚えていた。
「ご友人たちは？」
「その喋り方やめてよ、ほら、さっきの"やばー"みたいなの」
「それが好きだな」
「変なの…貴方物好きって言われない？」
「それが君の素？」
「返事になっていないわ」
変わらぬ口調で片方の口角と眉尻を上げた挑戦的ともとれる笑い方をされても、リーマスは図星を突かれたので黙るしかなかった。
「別に、貴方の友人関係は少し興味があったけど、無理して話すことでもないし、お互い様ってことにしておきましょう」
「気付てたんだ」
「はぐらかされたら、多少察するわよ」
「それに、そんなのは淑女の嗜みでないわ」
その笑みを見てすぐに冗談だと分かった。
満足気に上げられた顎と口角、それに合わせて徐々に気取ったような間のある喋り方なっていくのにつれて、リーマスもAとの会話が楽しくなっていった。
彼女はレイブンクローの首席ではあったが、同時に普通の女の子だった。
「ところで、その話し方はいつになったらなおるの？」
「えっと…暫くはこのまま」
もうそういう気分になっちゃったの！と最初よりは碎けた話し方で、随分残念そうに笑った。
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作者名：おーすし | 作成日時：2023年2月11日 19時
