手が届かない ページ38
ふとふわりと優しい甘いお菓子の匂いに包まれて目が覚めた。
「あら、起きちゃったのねA」
「……エリス」
掠れた声でエリスの名前を呼ぶと満足気にエリスは笑い俺の頭を撫でた。
「貴方が元気そうでよかったわ!」
「俺もエリスが元気そうで良かった…相変わらず森さんに可愛がられてるの?」
そう茶化す様に聞けばエリスはムッとした顔になって言う。
「リンタロウったら何時も私に可愛い服を着せようと必死になって気持ち悪いのよ!可愛い服は好きだけどリンタロウの必死さがキモいの!」
「あー相変わらずなんだ」
あまり変わっていない日常に笑いが漏れる。
するとエリスがジッと俺を見てから口を開いた。
「…あんまり変わってないと思っていたら随分と笑う様になったのねA」
「そうか?エリスは何にも変わらないな…おかげでちょっとほっとした」
そう微笑むとエリスは少し悲しげな顔になった。
「……Aはリンタロウが変わってて悲しい…?」
俺は見抜かれた事に驚きつつやっぱりエリスには勝てそうに無いなと思って笑う。
「……実を言うと少しだけ悲しい。昔はもっと楽しくて森さんとの距離もほとんど無かったのに…今じゃ何もかもが変わった気がして手が届かない気がする……」
「そう……だけどリンタロウはリンタロウよ。それだけは忘れちゃダメよ」
「あぁ」
優しい慰める様な口調のエリスに昔の様に甘えたくなったが俺は変わりに無理に笑って言う。
「そうだ、エリス」
「何?」
俺はもしかしたら死ぬかも知れない…目覚めなくなるかも知れない時を予想しながらエリスに告げた。
「もし、俺が死んだり、意識が戻らない昏睡状態になったりしたら太宰にこう伝えといてくれないか?」
「わかったわ。何を伝えればいいの?」
そう尋ねてくるエリスに耳を貸してほしいと頼んで囁いた。
そして離れて微笑む。
「じゃあ、頼んだエリス」
「えぇ!お姉ちゃんに任せなさい!」
そうにっこりと笑ってエリスは地下室を後にした。
俺は壁にもたれながらそっと溜め息を吐いた。
「そんな日が来ないといいけどな…」
そしてもう一度俺は眠りについた。
【桐崎君にとっての周りの印象】
乱歩:唯一異能で一度自分の事を忘れた筈なのに覚えてくれた人物。推理だけで自分との関係を割り出した乱歩の事は本当に凄いと尊敬している。
305人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「文豪ストレイドッグス」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
那戯田沢 亜須@グラブル中毒者(プロフ) - 倉の中の石さん» ありがとうございます!思惑通りに暗い過去と思って頂けてついガッツポーズを仕掛けました(笑)続編頑張りますね!! (2019年7月8日 0時) (レス) id: 480a6a9b45 (このIDを非表示/違反報告)
倉の中の石 - すごく面白いです。こんなに自然な暗い過去は久しぶりに見ました。続編も頑張ってください。 (2019年7月7日 17時) (レス) id: 873805d7e2 (このIDを非表示/違反報告)
那戯田沢 亜須@グラブル中毒者(プロフ) - 鶴さん» 読んで頂きありがとうございます!更新頑張りますね!! (2019年7月7日 14時) (レス) id: 480a6a9b45 (このIDを非表示/違反報告)
鶴(プロフ) - 初めて見たんですが、とっても面白いです!更新頑張ってください!応援しています! (2019年7月7日 14時) (レス) id: 2141c8a0fe (このIDを非表示/違反報告)
那戯田沢 亜須@スマホ使用不可で低浮上中(プロフ) - 夜美さん» ありがとうございます!まだ推敲中ですががんばりますね!! (2019年7月5日 20時) (レス) id: a29dbc7b52 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ