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第21話 ページ22

宗side



「………もう、いい」



『え…?』


自分の口から出た言葉は、自分でも驚くほど、心中の思いとは全く裏腹のものだった。




「もういい。僕から君に話すことは何も無い。

その代わり、君も自由だ。
もう部室に来ることもしなくて構わない。勝手にすればいい。


…君の好きにしたまえ」


「おい、宗」



零が僕の肩をきつく掴んで、やめろ、と無言で訴えていた。


僕自身もすらすらと並べられる嘘に目眩がしたけれど、言葉を紡ぐことは止められない。


止めてはいけない、気がした。




「…僕は僕に従わない、意志を持った人形に興味は無いのだよ」


『っ…!』



Aは僕の言葉に目を見張っていたままだったが、目元に涙を浮かべると勢いよく部屋を飛び出していった。


僕は悲しいほど冷静に、ただただその背中を、見つめていた。


「っ、おい、宗」



「…さて、私がAを探してきます。零は宗に話があるでしょうから、どうぞごゆっくり」



渉がいつもより神妙な面持ちでAを追って、僕らの間には僅かの沈黙が流れる。



零は微かだが、静かに僕を睨んでいた。



「……どういうつもりだよ」

「…別に。最善だと思ったことを言っただけなのだよ」



「Aが求めてた答えはそういう事じゃねぇだろ
、なんであんなこと…!」



「……じゃあここで。手を差し伸べたはいいが、どうすればいいか分からないんだ、と言えばよかったと?

…Aの思う斎宮宗は、完璧な学院の帝王だ。人間臭い僕など、彼の理想じゃない」



宛のない彼に手を差し伸べたのは、ただ、友達として。Aのことが、放っておけなかったからだ。



「…数日後にはドリフェスも控えている。Aは僕たちの相手が、fineだとは知らない」


「……」


「どうにも天祥院英智に、情があるようだしね。…戦いの間に挟まれるのは、苦しいだろうから」


Valkyrieしか知らない世界では、僕らだけの世界ならば、そんな哀しみは生まれなかったのに。



「負けるつもりは無いがね、あんなひよっこに」



だから、Aを僕から切り離した。そうすれば、悲しむことはないと思った。


天祥院からAを引き離すことは、

Aからあの幸せな笑顔を除くことは、したくない。




「…お前はそれでいいのかよ」


「…構わないよ」



Aという芸術が、あの美しい宝物が壊れずにいられるのなら。





「僕はAが、大事なのだよ、零」

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英智君尊いよぉぉぉぉ(((殴 - 待ってます!!! (2017年6月8日 7時) (レス) id: 2f00a5668f (このIDを非表示/違反報告)
作者(プロフ) - 英智君尊いよぉぉぉぉ(((殴 さん» 嬉しいお言葉ありがとうございます!目処が立ちしだい載せさせていただきますので、お待ちください,,,! (2017年6月7日 21時) (レス) id: f51b0c6802 (このIDを非表示/違反報告)
英智君尊いよぉぉぉぉ(((殴 - また新しく小説を作るなら余ったページでお知らせをしてください!すぐに見に行きます!!! (2017年6月6日 23時) (レス) id: 2f00a5668f (このIDを非表示/違反報告)
作者(プロフ) - 英智君尊いよぉぉぉぉ(((殴さん» ご指摘ありがとうございます…!直してきました、本当に有難いです。すみませんでした (2017年5月30日 20時) (レス) id: f51b0c6802 (このIDを非表示/違反報告)
英智君尊いよぉぉぉぉ(((殴 - 18話の零さんの台詞の「妙なことは言わないことを願うけどよ」が「妙なことは言わないとことを願うけどよ」なってますよ〜! (2017年5月30日 20時) (レス) id: 2f00a5668f (このIDを非表示/違反報告)

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作成日時:2017年5月25日 19時

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