8 痛かったから ページ9
クラスに戻った私を怪訝そうに見るクラスメートに、ほんの少しだけ膝が震えた。
弱虫な自身に鞭を打って、無理やり教室に入る。
グサグサと降り注がれる視線が酷く痛いけれど、誰一人として私に声をかけて来る人はいなくって、代わりにあちらこちらから私を噂する声が聞こえてくる。
足が竦む私を置いて、逆先くんは集まる視線を物ともせずに自席に向かう。
…逆先くんがこの教室に来ること自体がかなり珍しいこととはいえ、今回ばかりは私の責任が大きいだろうに。アイドルである彼は視線を浴びることには慣れっこなのか、はたまた私に気を遣っているのか。兎に角私に何を言うでもなく、彼は自身の席に着席し、荷物を広げ始めている。
そんな姿を見て、私も自分の席へと早足で向かった。
未だに視線がチクチクと刺さるから、それから逃げるように下ばかりを見て。
なんの落書きもない机。
久し振りに座った自席は、病院のベッドより固く冷たくて。
( まるで、私の居場所はないみたい )
なんとなく呼吸が難しかった。
苦しくはないけれど、身体に入ってくる空気はいつもより少なかった。
あぁ、やっぱり来るんじゃなかった。
隣のクラスだったらなら良かったのに。
私の味方なんてこのクラスにはいなかったんだ。
( あぁ、どうして隣が彼なんだろう )
脳裏にはあの瞬間のスバルくんの顔が焼き付いていた。
いつもそう。
嫌なことばっかり覚えて、楽しかったことなんてすぐに抜け落ちて。
( ああ…あぁ、もう… )
私、やっぱり、
その瞬間、どさりと隣の机に鞄の置かれる音。
驚いて隣を見れば、スバルくんの席に当たり前のように座る逆先くんがいた。
「やぁ子猫ちゃん、隣失礼するヨ」
悪びれる様子もなくにっこりと笑う彼。鞄からスマホだけ出したかと思えば、当然のように弄り始めるから、戸惑いが隠せず首を傾げる。
「でもそこ、スバルくんの席じゃ…」
そう言いかけた途端、後ろからは低く嫌悪を含む声が聞こえた。
「こんな席、こっちこそ願い下げだよ」
ちくり
その瞬間、心臓に針が刺さったみたいな痛みが走った。
手早く自分の荷物をまとめた彼は、先程まで逆先くんのいた席へ移動する。一番前の一番端。私達とは対角線上の、一番遠い席。
息苦しさは軽くなったけど、胸の痛みは更に増していく。
チャイムと同時に入ってきた教科担当の先生は席の移動には気付いていないらしく、なにも言われることなく、ただ時間だけが過ぎ去った。
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かなかなかな… - ありきたりな言い方になってしまいますが、ものすごく感動しました。所々泣きそうになってしまったり、最後はものすごくニヤニヤしたり。読んでいてとても楽しかったです。素敵な作品をありがとうございました！！ (2022年3月29日 19時) (
レス) id: 62f4ed090e (このIDを非表示/違反報告)
みる - 最後のタイトル回収がほんとうにすごかったです！めちゃくちゃ楽しませていただきました！！ (2021年9月21日 17時) (レス) @page50 id: 8126ce0406 (このIDを非表示/違反報告)
繕*(プロフ) - ふわり｡さん» コメント・ここまでお付き合い下さり有難う御座います。こちらこそ、これからもお付き合い頂ければ嬉しく思います笑 (2019年8月23日 14時) (レス) id: 019269e21e (このIDを非表示/違反報告)
繕*(プロフ) - 哀霞さん» コメント有難う御座います。そう言って頂けて幸いです…励みになります。次回作の方も宜しくお願い致します笑 (2019年8月23日 14時) (レス) id: 019269e21e (このIDを非表示/違反報告)
ふわり｡ - 完結おめでとうございます！雰囲気も素敵でエピローグまで一気に読んじゃいました（笑）これからもファイトです！ (2019年8月21日 17時) (レス) id: 9c497f6a6a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：繕 | 作成日時：2019年7月31日 11時
