29 守られてばかりだから ページ30
お昼休み、B組のドアを開ければ突如飛びだしてきた手に引きずり込まれるように教室の中へ。
勢いのまま何かに顔からぶつかって、何事かと顔を上げれば、かなりの近距離に伏見くんの顔があって、慌てて離れれば、今度は後ろに怖い顔をした大神くんがいた。
どうして機嫌が悪そうなのか、なんてとても聞ける雰囲気ではない。
昨日のお昼、黙って保健室で食べたこと…？それとも昨日の朝の件がもう広まっていて、氷鷹くんや神崎くんを巻き込んでしまったこと…？
( 思い当たるのはそれくらいだけれど、どちらも私が悪いし… )
ふいに、ふんわりと甘い香りに包まれる。
重すぎないお花の香りは、きっと鳴上くんのものだ。
「よく頑張ったわね、Aちゃん」
身構えていたのが馬鹿みたいだった。
いつだって彼らは優しくて、私のことを支えていてくれる。そんなことわかっていたはずなのに、怒られるかもと一瞬でも考えた自分を蔑んだ。
「怖かったわよねェ、痛かったわよねェ」
守れなくてごめんね。
とくん、その一言で心臓がはねたのがわかる。
酸素が薄くて、頭がぐちゃぐちゃで、きっとこれは今まで逃げてきたせいで身についた拒否反応だ。
それでも言わなくちゃ。否定しなくちゃ。
そうじゃないと、また、後悔してしまう気がして。
「ちがうの」
鳴上くんは少し驚いたように抱きしめる手を緩める。
「私、みんなに守られてばかりだよ」
でも、守られたままじゃ、きっと変われないから。
ごめんね。ありがとう。
どんな言葉をかけるのが正解かなんてわからなかったけれど、鳴上くんは大きく深呼吸をしたら「お昼食べましょっか」なんて優しく笑ってくれた。
気付けば私の左手は、握っていたペットボトルの水滴でびしょびしょで、真っ先に気付いた伏見くんがハンカチを差し出してくれる。
「神崎さまとも仲直りはできましたか？」
「…うん、ありがとう」
洗って返すねとハンカチをしまおうとすれば、「この程度お気になさらず」と取り返されてしまう。
今日は姫宮くんと食べるらしい。彼は鞄から綺麗に包まれたお弁当を取り出し、そのまま教室を出ていった。
私もみかくんの隣に座ってお弁当を広げる。
向かいの席には大神くんと鳴上くん。
私の隣にはみかくん。
衣更くんがいないのはいつも通りだけど…
「…今日は凛月くんはいないの？」
目の前の二人には目を逸らされてしまったから、それじゃあと隣のみかくんを見る。
彼は楽しそうに笑う。
「今日は凛月くんの番なんよ！」
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かなかなかな… - ありきたりな言い方になってしまいますが、ものすごく感動しました。所々泣きそうになってしまったり、最後はものすごくニヤニヤしたり。読んでいてとても楽しかったです。素敵な作品をありがとうございました！！ (2022年3月29日 19時) (
レス) id: 62f4ed090e (このIDを非表示/違反報告)
みる - 最後のタイトル回収がほんとうにすごかったです！めちゃくちゃ楽しませていただきました！！ (2021年9月21日 17時) (レス) @page50 id: 8126ce0406 (このIDを非表示/違反報告)
繕*(プロフ) - ふわり｡さん» コメント・ここまでお付き合い下さり有難う御座います。こちらこそ、これからもお付き合い頂ければ嬉しく思います笑 (2019年8月23日 14時) (レス) id: 019269e21e (このIDを非表示/違反報告)
繕*(プロフ) - 哀霞さん» コメント有難う御座います。そう言って頂けて幸いです…励みになります。次回作の方も宜しくお願い致します笑 (2019年8月23日 14時) (レス) id: 019269e21e (このIDを非表示/違反報告)
ふわり｡ - 完結おめでとうございます！雰囲気も素敵でエピローグまで一気に読んじゃいました（笑）これからもファイトです！ (2019年8月21日 17時) (レス) id: 9c497f6a6a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：繕 | 作成日時：2019年7月31日 11時
