28 一人しか知らないから ページ29
欠伸混じりに教室に入ってきた佐賀美先生に、クラス全員がバラバラと席につく。見計らって号令をかけようとした氷鷹くんを止め、先生はクラスのことで大事な話があると言った。
「昨日の件に関してだが…なぜだか知らんが生徒会からの命令でな、問題児クンは数カ月の謹慎処分になった。…まぁ、お前らヤンチャしすぎんなよお」
以上。
氷鷹くんが口を開くよりも早く、佐賀美先生は教室を出ていった。最も、氷鷹くん自身驚きのあまり声を発せない様子で、彼の後ろに座る遊木くんは今日もまた口をぱくぱくしている。
けれど一番驚いているのは私だ。
斜め前の席は空席。飛んでくる視線も痛くて、でもこのことに関与した覚えもないから更に困惑する。
確かに衣更くんや伏見くんは頻繁に生徒会に出入りしていたけれど、他クラスの彼らがそんなことを報告して、更には証拠もなくそれを生徒会長が納得するだろうか？だからきっと、B組のみんなは違う。
なら、このクラス。
思い当たる人なんて一人しかいなかった。
根拠なんてないし、そもそも彼はあの場所にいなかった。それでも、良くも悪くもこんな魔法みたいな事ができるのは隣の席の彼だけなのだ。
咄嗟に教室を飛び出す。
神崎くんに呼び止められるのも無視して真っ直ぐに走る。向かうはいつもの廊下、そしてその裏側へ。
階段を駆け下りて扉を開けば、待ち構えていたかのようにこちらを見る彼の姿があった。
「HRはもう終わったノ？」
ニッコリと笑う彼に何をしたのかと訊ねれば、彼は何の事かと態とらしく首を傾げる。
昨日貴方は知らないはずのことを知っていて、それに言った通り今日になって現状が変わった。
つっかえつっかえな言葉なんて届いていないのか、彼は顎に手を当てじっと私を見るだけ。
「…夏目くんは、なんで私なんかを助けるの」
初めてあった日も。
私の荷物を守ってくれた時も。
昨日のことも。
二年になって初めて同じクラスになったのに。それから殆ど喋ることもなかったのに。
どうして、困った時に必ず私を助けてくれるの。
彼は一瞬キョトンとして、複雑そうに笑って、最後にため息をついた。
「…今はヒミツ」
「ッだから、どうしてそんな…！」
「ボクも上手くサポートしてあげるけド、糸を手繰り寄せるのはキミの頑張りだヨ」
ツンと眉間を押される。
気付けば目の前にはパタリと閉ざされた扉。
( あぁ、言葉の通り突き返されてしまった。)
整理のつかない頭で、ぼんやりと来た道を戻る。
29 守られてばかりだから→←27 そんなことでよかったから
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かなかなかな… - ありきたりな言い方になってしまいますが、ものすごく感動しました。所々泣きそうになってしまったり、最後はものすごくニヤニヤしたり。読んでいてとても楽しかったです。素敵な作品をありがとうございました！！ (2022年3月29日 19時) (
レス) id: 62f4ed090e (このIDを非表示/違反報告)
みる - 最後のタイトル回収がほんとうにすごかったです！めちゃくちゃ楽しませていただきました！！ (2021年9月21日 17時) (レス) @page50 id: 8126ce0406 (このIDを非表示/違反報告)
繕*(プロフ) - ふわり｡さん» コメント・ここまでお付き合い下さり有難う御座います。こちらこそ、これからもお付き合い頂ければ嬉しく思います笑 (2019年8月23日 14時) (レス) id: 019269e21e (このIDを非表示/違反報告)
繕*(プロフ) - 哀霞さん» コメント有難う御座います。そう言って頂けて幸いです…励みになります。次回作の方も宜しくお願い致します笑 (2019年8月23日 14時) (レス) id: 019269e21e (このIDを非表示/違反報告)
ふわり｡ - 完結おめでとうございます！雰囲気も素敵でエピローグまで一気に読んじゃいました（笑）これからもファイトです！ (2019年8月21日 17時) (レス) id: 9c497f6a6a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：繕 | 作成日時：2019年7月31日 11時
