検索窓
今日:5 hit、昨日:1 hit、合計:40,654 hit

7 ページ9

『すみません、寝ちゃってたみたいで…夕飯何がいいですか?』


悟られていないだろうか

可哀想、なんてそんな同情が一番嫌いだ


過去を話せばみんな優しくしてくれる

けど同時に誰もが離れていく


だから多くは望んじゃいけない

拾ってくれただけありがたい


俺はもう助けて貰ってる


『そういえば昨日のお惣菜残ってましたよね?早めに食べちゃいましょうか。おかずは適当でいいですか?』

「…おい」

『あっ、お昼の唐揚げも残ってるじゃないですか、ついでに出しちゃっていいですか?』

「おいって!聞いてんのか!」


左馬刻さんに背中を向けていたのが

肩を掴まれ一気にそちらに向かされる


キッチンに押し付けられた腰が

シンクにくい込んで痛い


左馬刻さんの焦ったような顔が

逆に俺を冷静にさせた


「お前…居場所がねぇって、それだけじゃねぇだろ。言えよ、何されたんだよ」

『………』


言えるはずがない

言えばこの人も離れていく


これは一生、人に打ち明けることはない


『やだな、なに勘違いしてるんですか左馬刻さん。俺は貴方が思っているほど辛くありませんよ』

「誤魔化すな…分かってんだよ」

『誤解ですって…俺なんかより、左馬刻さんの方が辛い経験したはずでしょ?俺だってそのくらい分かってます』


あの時の涙はそのせいだ

自分と重なったから、悲しくなった


左馬刻さんにとって俺は

まだ救える自分


救われなかった自分への罪滅ぼしだ


なら、彼の思うままに救われたふりをして

笑顔で過ごしていればいい


それで満足するなら


「俺は………いや、なんでもねぇ」

『……さ、ご飯にしましょうか』


まだたったの数日

それだけしか一緒にいない


彼はそれ以上深くは突いてこなかった

それだけの信頼関係もないからだ


それでいい


この距離感を守っていこう

時々話をして静かに時が過ぎるのを待とう


早く過ぎればいいのに

お互いが傷つく前に


『…おいしい』


誰かと一緒に食べる食事の美味しさも

誰かと過ごすこの小さな空間も


本当は当たり前のことなんだ


それをとうに忘れていた心が

思い出したかのように叫ぶ


涙が出そうだった


必死にこらえて

目の前の左馬刻さんを見つめる


助けて欲しい

辛い、苦しい


もう何が普通なのかも分からないんだ


消えてしまいたい


だけどぐっと堪えて

また明日も笑うんだ







左馬刻さん、貴方のために

.

8→←6



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.7/10 (78 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
241人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

絵描きさん(プロフ) - ぺらさん» 分かる(´-ω-`) 左馬刻様をもっと普及させるためにも頑張ります〜 (2018年12月9日 0時) (レス) id: 2c9b4e9ca8 (このIDを非表示/違反報告)
ぺら(プロフ) - もう、推しが尊い (2018年12月5日 5時) (レス) id: 30c81c3732 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:絵描きさん | 作成日時:2018年10月18日 14時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。