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"俺が、助けてやる"


左馬刻さんはそれ以上を語らなかった


ただそれだけを口にして

ビニール袋をぶら下げた俺の手を引き


数十分前までいた彼の家へ戻った


これまでで感じてきた彼の性格とは

似つかないほどの悲しげな顔


俺はそれを黙って見ているだけだった


ーーーーーーーーーーーーーーー


「おい興津!」

『なんだようるさいな』

「これ隣のクラスの宮内から。またラブレターじゃねぇの?笑」

『からかうなよ、私女だし』


彼に出会ってから1週間が過ぎた

俺は今も無事に学校に通っている


あの日、彼の家へ行った後

一度実家ヘ戻った


帰るためじゃない

荷物を移すためだ


左馬刻さんに言われて持ってきたのは

学校の制服と教材のみ


そして再び彼の家へ戻り

それらを使っていない小さな物置に入れた


左馬刻さんが言った

"助けてやる"は、つまりそういうことで


今の現状、俺は左馬刻さんの家に

居候しているということだ


翌朝学校に向かって普段通り過ごし

彼の家に戻ると沢山の服が用意されていて


俺が留守のうちに下っ端に買いに行かせた

らしい


1週間経った今では


俺用の部屋着も、歯ブラシも、タオルも

全て揃えてあった


どこからそんな金が出てくるのか

既に十分過ぎる日用品が日に日に増える


ただ、一つ気になることがあるとすれば


一緒に住んで、毎日会っているのに


まだあれから一度も左馬刻さんと

話していないことだ


原因は薄々分かっている


1週間も一緒にいれば気づくはずだ

俺が本当は女だということ


正確に言うと、体が女であるということ


それを知って俺を避けている

そういうことだろう


「興津ー?なにボーッとしてんだよ?」

『あ、…ごめん、なんでもない』

「そ?いーよなお前は、女なのに男の俺よりもモテんだからさー」

『何言ってんだよ、お前が気づいてないだけで意外とモテてるからな?お前』

「まじ!?誰!?」

『んーっと……えっと…』

「………もういっそ慰めなんてしないでくれ…どーせ俺はノーマルだよ」

『そんなことないって!私割とタイプだし』

「じゃーお前付き合えんのかよ」

『無理かな』

「くそっ!なんか分かんないけど振られた気分だよ!!」


無理だ


俺はあの瞬間からあの人しか見えない

見えなくなってしまった


嫌われたんだろうか

俺のために涙まで流した彼に…


彼にだけは嫌われたくない


彼にも見捨てられたら

俺にはもうなにもない





なにも…

.

6→←4 左馬刻side



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絵描きさん(プロフ) - ぺらさん» 分かる(´-ω-`) 左馬刻様をもっと普及させるためにも頑張ります〜 (2018年12月9日 0時) (レス) id: 2c9b4e9ca8 (このIDを非表示/違反報告)
ぺら(プロフ) - もう、推しが尊い (2018年12月5日 5時) (レス) id: 30c81c3732 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:絵描きさん | 作成日時:2018年10月18日 14時

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