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まずい

降ってきたかな…


そう思って空を見上げようと

顔を上げると


嫌でも目の前の男の顔が

視界に入り込んだ


別に怒った顔なんかしてないし

笑ったり悲しそうな顔もしてないけど


ただ無表情って感じの顔で

目だけがやたらに潤んでいた


俺は最初それがなんでか分からなくて

空を確認するのも忘れて男を見つめていた


堰が切れたように

男の目からボロボロと涙が落ちてくる


なのに本人はそれに気づいていないようで

ただ目下の俺を見ていた


さっき目の前に落ちてきた雫が

雨ではなく彼の涙だということは


言わずもがな理解出来た


「…?げっ、左馬刻おまっ、何泣いてんだよ!?」


隣でハラハラとした顔で始終を見ていた

黒髪の男も彼の涙に気づき


また別の意味のハラハラとした顔で

慌てていた


「………」

『え、あの…なん』


なんで泣いてるんですか?


そう聞こうと声をかけると

突然前のめりに俺に向かって倒れてきた


顔も怖いし

ピアスとかめっちゃ開いてるし


服ダサいけど怖そうな男が

急に近づくもんだから


支える腕も体も強ばって

ぎごちなく彼を抱きとめると


耳元で微かに寝息が聞こえた


『寝てる…?』


ーーーーーーーーーーーーーーーーー


「わりぃな、運ぶの付き合わせちゃって」

『いえ、どうせ今更ですし…することもないんで』


怖い男の腕を肩に回して


付き添い?の男とズルズルと寝てしまった

彼を引きずりながら


彼の家だという横浜港近くの

借り家へ向かう


黒髪の男は山田一郎さんと言って

俺の一つ年上らしい


そして悠長に寝ているこの人は

碧棺左馬刻さん


ヤクザの組の頭をやっているらしい

まだ若いのに


一郎さんと左馬刻さんは昔組んでいた

チームの仲間だったんだとか


「俺明日も仕事あるし、弟達に心配かけると悪いから帰るけど…お前どうする?」


彼の家に着き、ベットに彼を放り投げると

一郎さんは早々に身支度を始めた


確か…弟が2人いるんだったかな

俺より年下の


『俺、は…』


と言っても帰る家などない


親には何も言わずに家を出たが

携帯には心配の連絡など1つもなかった


「……良かったら俺んちに来るか?」

『…え』

「居場所、ねぇんだろ?」


一郎さんは優しい人だ

正直、泊めてくれるなら有難い


だけど、どこか違う

これじゃない


『ありがとうございます、でも大丈夫です』






この人じゃない

.

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絵描きさん(プロフ) - ぺらさん» 分かる(´-ω-`) 左馬刻様をもっと普及させるためにも頑張ります〜 (2018年12月9日 0時) (レス) id: 2c9b4e9ca8 (このIDを非表示/違反報告)
ぺら(プロフ) - もう、推しが尊い (2018年12月5日 5時) (レス) id: 30c81c3732 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:絵描きさん | 作成日時:2018年10月18日 14時

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