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「じゃ。また連絡しますんで」
『りょーかい。お疲れ様〜』
軽く会釈して飛んだホークスを眺めていた。
彼とは仲良くなれないだろうな。
そう思うのにも理由はちゃんとある。
私より年下なのにヒーロー思想が1人前だからとかではない。
いや、それも少しはあるかもだけど。
ダサい話、私はいつも強いひとの味方だった。
負けるのは恥ずかしいし、痛い。
そんな思いをするくらいなら敵を作らないのがいい。
いつの間にかそう思うようになっていた。
これも賢い大人の生き方だと思う。
いつだって弱い人は強いひとの支配下にいる。
『あー…またやなこと思い出しちゃった』
今日はお酒も飲んでたからいい気分で過ごせると思ってたのに。
いっそのこと、道端で寝ちゃうくらい酔いたかった。
ヒーロー始めてからそんなこと出来なくなったけど。
ヴーヴーヴー
ポケットに入れていたスマホが振動する。
この振動の回数…
『はぁ…』
ヒーローしてる人間には似合わない深いため息がこぼれる。
自分の溜息にまじるアルコールのにおいにの頭が痛む。
いやいやスマホを見るとやはり姉からだった。
出ようか出まいか迷っているうちに着信履歴はどんどん増えていく。
『…よし!』
『もしもし、なに?おねえちゃん』
「やっとでた。なにしてんのー?」
『飲みながら打ち合わせ』
「あそ。」
自分から聞いてきたくせに。
とは言える訳もなくへへと適当に笑った。
「で、あんた早く実家に顔出しなさいよ。」
『…お母さんは?』
「いるけど」
『変わって。』
「自分の携帯でかけなおせよ」
ほろ酔い気分でお母さん以外の家族とは話したくない。
いい気持ちだったのに、
息苦しくなって
目の前がかすんで
鼻が詰まるような感じがして__
やっぱ家族に電話かけたくないな。と思っていたらお母さんから電話が来た。
『もしもし、お母さん』
「A」
『なに』
「来週にでも顔だせない?」
『また親戚で集まるの?』
「お父さんの会社の集まりよ。
お姉ちゃんも出席するから、お父さんの顔を立ててあげて」
『……』
「Aちゃん。お願い。」
『………分かった』
「また日時は教えるから、それに合わせて帰っておいでね」
『……うん、』
もう声の聞こえないスマホを片手に私はずっと頬に当てていた。
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作者名:無個性 | 作成日時:2023年4月10日 0時