工藤姉は弟がキライ３【名探偵コナン】

132_最初の奇跡 ページ40

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「ICPチェック。」

「心拍数は60、血圧100〜50、ICPも安定しています。」



Aはひと呼吸置く。

ここからが、本番だった。



「これから脳神経細胞を圧迫している血腫の除去へ移ります。ここから先はくれぐれも慎重にお願いします。少しでも手元が狂えば患者は永遠に植物人間ですから」

「「はい！」」



疑心気味だった麻酔科医や技士らが、今ではAの指示に心をひとつにしていた。

そんな彼女の額にうっすらと浮かぶ汗を、助手である風戸は優しく拭う。



「Aさん、ライトの明るさはどうしますか？中央のみ照らせるようセットしてありますが。」

「助かります。そのまま固定で明るさは1500ルクスに保持してください。」

「了解。」



手術室の様子を、上のフロアで見ていたベテランの医師たちは驚愕したように見下ろしていた。



「彼女はもう脳神経系まで到達したのか！？」

「風戸先生の的確なサポートがあってこそだろうが、それにしても…早い。」

「他の者への気配りも完璧だ。本当に年齢は26歳なのか？」

「まるで指導の経験があるかのようじゃないか。」

「いやそれよりも、あの野生的で大胆なメス使いはなんだ。見たことがないぞ…！」

「野戦病院での経験でもあるのかもしれんな…」



事実、Aは医者が自分しかいないという状況下で、使えそうな素人を一から教えながら本番の手術に挑んだこともあり、過酷とも言える環境で治療をしたこともある。

実践の数や難易度の高い手術は、中堅クラスの医師に匹敵する経験を積んでいた。

ただし、実年齢は18歳だが



「……私は、とんでもない場所に居合わせているのかもしれん。」



先ほど成功するはずがないと皮肉を口にしていた年配の医師が、唖然とそう言った。

独り言のようなその呟きに、この病院の医院長が「いやいや」と首を横へ振る。



「権威ある脳外科医の貴方が何をおっしゃいますか。アレはただ運が良くて勢いのあるだけの小娘ですよ。」

「……私はこの数十年、脳神経外科として脳や脊髄･神経を専門に治療を行なってきました。高度で精密な技術が必要なほど、それに特化した専門医が必要となるからです。」



…だが、彼女は違う。

脳神経系の網をくぐり抜け、血腫を取り除いているAをガラス越しに目を細める。



「数年もしない内に、彼女の名は医療界に轟くことでしょう。」



開始から10時間を越えようとした所で、手術は無事に終了した。

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