129_最初の奇跡 ページ37
風戸side
僕の隣でカルテを見るAさんの表情はかたい。
「沢木さん、アナタの味覚障害の原因が分かりました。」
「本当ですか…！？」
沢木さんは当初、味覚に加え嗅覚も感じなかった。
サバイバルゲームがストレス発散になったのか、嗅覚の部分はかなりの改善が見られた。
けれど肝心の味覚だけが未だ戻らない。
Aさんと僕の提案で精密検査を受けてもらった結果が先ほど出た。
「沢木さんの脳の内部に血腫が見られました。」
「血腫…？」
「脳の内部に血が溜まることです。」
【脳内血腫】
脳内にじわじわと血が貯まる病気で、沢木さんの場合、大脳の味覚中枢の神経路に少量の血腫が見られた。
おそらく事故後、1年間かけて溜まったのだろう。
「今はまだ血腫は小さいので目立った症状は味覚障害のみですが、時間が経つにつれ他の症状も現れるでしょう。」
「それは治るのですが…？」
「手術をする他、治る手立てはありません。」
驚きのあまり、Aさんの方を見やる。
まさか、開頭手術で血腫の除去をする気なのか…？
「……えっと、そんなに難しい手術なんですか？」
「ええ、沢木さんの血腫はとても難しい箇所にできていて、匙を投げる医者がほとんどでしょうね。確かに理論上は可能ですが…成功したのもおそらく数例でしょう。」
「それでもやる価値はあります。」
どこか意固地になっているようにも見えた。
普段とは違う彼女の様子に、沢木さんは察しがついたようだ。
諦め気味に目を伏せる。
「…私の命は残りわずかなのですね。」
「っ、それは、」
患者への余命宣告など初めてなのだろう、たじろぐAさんに代わって、僕が答える。
「血が溜まる速度にもよりますが、おそらく1年以内には。」
「…そうですか。」
これも僕ら医者の仕事
患者のためなんだよ。Aさん
「──私が絶対に死なせない。」
言い切る姿は、死神に死刑宣告をするかのようだ。
生を望み死を拒絶する彼女は、崇高でいて孤高。
その純粋で清らかな想いを、可能な限り叶えてやりたいと願う僕はまさに信仰者だな。
だが、彼女の純血に縋る滑稽な人間は僕だけじゃないらしい。
「貴方は本当に、美しい人ですね。」
「…え？」
「余命があろうとなかろうと、私の答えは決まっています。」
安心しきったような声だった。
沢木さんは目を細めて微笑む。
「Aさん、私を──助けてください。」
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仮面タロウ(プロフ) - 深月さん» ですよね！！！夜の美術館とか似合いそうだなぁと思って書きました！いつかは夜のシチュエーションも書いてみたいですね(^^) (2022年8月21日 11時) (
レス) id: 2292ab7783 (このIDを非表示/違反報告)
深月(プロフ) - ジン……！！！！休日に一人で美術館巡っているとか可愛すぎます！そして、わかりみが深いです、ジン美術館好きそう（笑）続き楽しみにしています。 (2022年8月16日 21時) (レス) @page44 id: 8da4958f2c (このIDを非表示/違反報告)
仮面タロウ(プロフ) - 小宮瑠璃さん» 嬉しい…！ありがとうございます！！ (2022年7月26日 22時) (レス) id: 2292ab7783 (このIDを非表示/違反報告)
仮面タロウ(プロフ) - あお。さん» コメントありがとうございます！現在元気に3股してます！笑 これから4になるのか、もっと増えるのかは乞うご期待！！ (2022年7月26日 22時) (レス) id: 2292ab7783 (このIDを非表示/違反報告)
小宮瑠璃 - 仮面タロウさん» めっさ楽しみですぅっ！！完結まで私はこの作品を推し続けます！！ (2022年7月25日 22時) (レス) id: dbce0c6b80 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：仮面タロウ
| 作成日時：2022年6月28日 12時
