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貴方side
ベルモットとキュラソーさんが、やけに暗い面持ちで帰っていくのを窓から確認した後、私はソファに深くもたれかかった。
はぁ〜〜、緊張したぁぁ
「どうやら盗聴器の類いは付けられていないようだ。」
「ならよかったです……」
「で、“彼”とはどう言う仲だったんだ?」
ガラスの棺桶に眠るスコッチさんを、赤井さんは指差す。
そう言えば話してなかったけか。
私がまだ実の母親と暮らしていた子供の頃の記憶を思い浮かべる。
あの頃のことを思い出すだけで吐き気がした。
「小さい頃、トイレの広告にあった相談ダイヤルに電話をかけたことがあったんです。」
助けはすぐに来た。
けれど私のことを知った瞬間に、それは業務的なものとなった。
結果、解決しないで問題は先送りにされるだけ。
『ひとりで悩まず助けを呼ぼう』
この言葉が、広告が、私を苦しめた。
「助けを呼んでも助けてもくれないどころか悪化させるだけだったんですよ。大人が業務的にやっているただの暇つぶしに、巻き込まれただけでした。」
そんな時に、彼と出会った。
『君、大丈夫?』
そんなありきたりな言葉ひとつで、ひろ君は私を救いあげてくれた。
「私にとって彼はヒーローで、憧れだったんです。」
義務的な“助けたい”じゃない。
自分から“助けたい”と願い手を差し伸べてくれた。
そんな人になりたいとも思ったし、彼の力になりたいとも思った。
「けれど現実では、力になるどころかスコッチを殺してしまったんですけどね…」
「…A、お前はスコッチを殺そうとして今回動いていたのか?」
「っ、違います、」
「なら、それが全てだ。意図しなかった行動まで責任を持つなんてことは大人がすること。お前はまだ庇護下にあるべき子供だ。」
「そんなのは言い訳ですよ!事実、私がいたせいで彼は…!!」
「お前は、スコッチが自分で選択したことに口出しするほど彼の人生に干渉していい人間なのか?」
「それは…」
「もう一度聞く。彼は、どんな人間だったんだ。」
赤井さんの言葉に咎めるようなものはない。
その優しい声色が、私の罪悪感を解きほぐしていく。
スコッチは…いいや、私の知るひろ君は…
「……本当に、優しい人でした。」
「…そうか。」
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仮面タロウ(プロフ) - 深月さん» ですよね!!!夜の美術館とか似合いそうだなぁと思って書きました!いつかは夜のシチュエーションも書いてみたいですね(^^) (2022年8月21日 11時) (レス) id: 2292ab7783 (このIDを非表示/違反報告)
深月(プロフ) - ジン……!!!!休日に一人で美術館巡っているとか可愛すぎます!そして、わかりみが深いです、ジン美術館好きそう(笑)続き楽しみにしています。 (2022年8月16日 21時) (レス) @page44 id: 8da4958f2c (このIDを非表示/違反報告)
仮面タロウ(プロフ) - 小宮瑠璃さん» 嬉しい…!ありがとうございます!! (2022年7月26日 22時) (レス) id: 2292ab7783 (このIDを非表示/違反報告)
仮面タロウ(プロフ) - あお。さん» コメントありがとうございます!現在元気に3股してます!笑 これから4になるのか、もっと増えるのかは乞うご期待!! (2022年7月26日 22時) (レス) id: 2292ab7783 (このIDを非表示/違反報告)
小宮瑠璃 - 仮面タロウさん» めっさ楽しみですぅっ!!完結まで私はこの作品を推し続けます!! (2022年7月25日 22時) (レス) id: dbce0c6b80 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:仮面タロウ | 作成日時:2022年6月28日 12時