あなたの悩みはカクテルの味 【ジョジョの奇妙な冒険】

・ ページ10

カクテルーーーライラを飲んでしばらく、口の中に残った後味を噛み締め、教室を出る。

　職員室に戻り、帰り支度をしていると、一人の教師が声をかけて来た。

「あ、ねぇ川尻くん。じつは俺今日大事な用事があってさ〜……悪いんだけどこの資料、まとめてもらっといてもいい？」

　ああ……いつもと同じだ。どうせ用事なんてない。そうわかりきっているはずなのに、私は今日もまた頷いて仕事を肩代わりするーーーーはずだった。

　ふと、思う。

　私になんの関係があるのか、と。

　私はこの資料がなくても困りはしない。なら、なぜ私はこの面倒な仕事をわざわざ肩代わりしなくっちゃあいけないのか、と。

「……すまないが、」

　初めて、拒絶をした

「私にも用事があってね。悪いけど他の人に頼んでくれ」

　相手の返事を待たずに私は職員室を出た。

　向かうは妻の待つ我が家へと……



　家に着いた。この時間帯に帰って来たのはいつぶりだろうか……玄関の扉に手をかけて少し止まる。妻とーーしのぶと会話できるのだろうか、と。

　もう何日と話してはいない。共通の話題もわからず、いつもは遅くに帰るせいもあり寝ている日も多いおかげで話さなくて済むが、今日は違う。確実に家の中にいて、会話する機会も増える。そうしたら、私はしのぶと話せるのだろうか？

　その時、脳裏にはさっき会った生徒の言葉が浮かんで来た。

『もし、悩んでることがあるんだったらコレを飲んでみてください』

『きっと、悩みが解決しますよ。』

(……よし)

　扉に、手をかけ開いた。



「ただいま」

　台所で料理をしていた、しのぶに声をかける。

「え、もう帰って来たの？今日は早いのね」

「あぁ……」

　会話が続かない。あぁやはり……

「ねぇ」

　しのぶが、手を拭きながら私の方を向く

「……今度の土曜日って空いてる？」

「あ、あぁ空いてるが」

「…………ママ友から、映画の券もらったの……良かったら一緒に行「行こう」……え？」

「映画、行こうか。……最近、一緒に話す時間も減ったから……その、映画を観た後で、食事にでも行かないか…？」

　不自然ではないだろうか。と、しのぶの顔を恐る恐る見ればーーー

「えぇ！行くわ！」

　とても、嬉しそうで……あぁ、やはり私は、この人のこの顔がーーーー





◇◆◇

ライラ

【カクテル言葉】
今、君を思う


殺人鬼に顔を奪われ妻を奪われたのに、ほとんど原作で触れられない川尻さんが好きです。

死体Qとモヒート→←・

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す