【歌い手】黙って頷いとけ【うらくたぬき】

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「はー、疲れた…」



ぼすんと体をベットに埋めて目に腕を当てる

1日で密度が高すぎる日だったな、なんて思って目を閉じる



でも、良い人でよかったな



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「…おい…なぁ」

「…ん」



肩をゆらゆらと揺すられる感覚がして、目を薄く開ける…なんだよ



「あ、やっと起きたおはよ」

「…え」

「もう10時過ぎたし俺仕事だから家出るけど朝ごはん机にあるし勝手に食べたかったら食べて、片付けはお願いしてもいい？」

「…あ、はい」

「じゃ、よろしく」



放心状態のまま適当な答えをぼんやりと返して閉まっていくドアをじっと見つめる



あれは、うらた、さ、そうだ私あの、うらたさんの、い、えに…



「！？」



ばっと飛び起きて洗面台に駆け込んで鏡を見る



「…ひぃいい！」



口の横にくっきりついた涎の跡

浮腫み切った顔

腫れぼったい瞼…と言った無様な寝起き顔が目の前に広がる



「…恥だ、なんてこった」


会ってすぐの男性に、しかも住まわせて貰ってる身で、しかも食事まで準備して貰ってて



「消えたい…」



そう呟いてリビングに繋がるドアを開けて机を見る



「…お、いしそう」



うらたさんなんなの？

なんか未来のスパダリ特訓でも受けてるの？

ご飯まで作れちゃうの？は？



「くっそ…美味しいな…卵焼き甘いなあ…」



美味しい和食を食べながらちらりと何気なくつけたテレビを見る…あぁ、音楽番組か

ぼーっとその番組のピックアップアーティストだかなんだかいうコーナーを眺める



『………夏ツアー…………日本武道館……』



その中で何気なく流れた曲



「…ん？」



はっと我に帰るともう画面は違うアーティストを映していて




「…うらたさんに似た声の人な気がした」



でもまあ武道館とか夏ツアーとか違うよなうんうん

絶対やり手商社マンだよなうんうん



…凄く、似てた気がしたけど



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