【歌い手】黙って頷いとけ【うらくたぬき】

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『で、東京はどう？』

「控えめに言って最悪、オーバーに言うと超最悪だね」

『まぁ少し予想はできてたよね』



一通り荷物の整理が終わり、腰を下ろして友達に電話を掛けた



『急に東京出てく！って言って成功してる人あんまりいないしね…あと今どこにいるんだっけ？』

「(顔と声が)イケメンの家」

『え、本当に暮らしてるの！？やるじゃんA〜！！』



そう言ってじゃあお幸せに〜！と電話を切る友人



「えあ！？ちょっ！」



つーつー、と無機質な音を鳴らす携帯をずるりと下げて天井を仰ぐ



悪い人…ではないんだと思う多分、



そう思ってため息をついた

そんな時だった



「ねえ」



かちゃ、と開いたドアからうらたさんが顔を覗かせる



「俺、ご飯これから食べるんだけど」



そう言ってじーっと私を見つめるうらたさん



「そ、そうですか、はい」


わかりました、それだけ言って荷物の整理に戻ろうとした



「………るの」

「え、すみませんもう一回言って…「ご飯、1人で食べるの」



その言葉で少しだけ、うらたさんの一部が見えた気がした

棘のある言い方は愛、坂田さんがそうさっき言っていたのはあながち嘘ではないのかもしれない


「別に、1人で食べるならそれでいい」

「…一緒に、着いていっても良いですか？」

「………勝手に、すれば」



これは私の勝手な想像だけど

多分今のは彼なりの「一緒に食べよう」と言う言葉だったのだと思った



私が何様だよって感じかもしれないけどたぶんうらたさんは



不器用な人、なんだろうな



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