生かされた借り ページ8
『A、もうこれで終わりだ。これで……お前が手を汚す理由も、人殺しになる理由も、後輩監視官泣かせる理由も、本物の銃を握る理由も無くなっただろ?』
一人の男が、座り込む私を見下ろしてそう言った。
『お前の気持ちは分からなくはない。けれど、土岐園監視官を責めてやるな。俺が、土岐園監視官にお前を止めろと言ったんだ。土岐園監視官は良くやったよ。人殺しになるのは───────“槙島聖護”を殺すのは、一人で十分だ。なら、俺がその役目を負う。逃げるなら、お前よりも俺の方が体力があるしな』
その男の名は“狡噛慎也”。
優秀な監視官だったが、“標本事件”の一件から次第に色相を濁らせ、執行官となった男。
私と狡噛の目標は同じだった。
私とこの男は何処か似ていた。
だからこそ、私の考えていた事もこの男には分かったのだろう。
狡噛は去り際に「後の事は宜しくな。常守監視官やギノの事も、頼んだ」とだけ言って逃亡犯となった。
(シビュラに監視された社会を潜り抜けながら逃げるなんて、本当に大した男だ。しぶと過ぎて逆に呆れる)
でも、もしあの場所で私が槙島聖護を撃っていたら……私は今の狡噛と同じ立場になっていた事だろう。覚悟はしていたさ。していたが……私なら何時まで逃げ切る事が出来たのか。
改めて考えるだけでも疲れてくる。
「逃げ切れよ、コウ。んで、私を生かしたあん時の借りはいつか返してやる」
小さくそう呟いて、私は一人ソファーに横になった。
嫌な予感 常守視点→←仲間 ※オリジナル執行官、監視官出ます
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イマツギ(プロフ) - 続きが楽しみです。お時間があれば更新頑張ってください! (2022年3月12日 12時) (レス) @page34 id: f5ff06f155 (このIDを非表示/違反報告)
紅 - 面白い!更新頑張って下さい! (2020年4月10日 13時) (レス) id: ceacd95bed (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:遙 | 作成日時:2016年2月6日 20時