身をもって ページ20
『この間とっちめた半グレ連中が居ただろ?そのうちの一人に銃兎が他に売人は居ないのか問いつめたところ、半グレ連中がばら撒いていたヤクとは別に、裏で近頃密かに流行りだしてるクスリがあると分かったらしくてな。捕まえた半グレ共の中でそのクスリの存在を知ってるのはたった数人。けれど、手は出してないから何のクスリか分からなければ売人が誰なのかも知らない』
「なるほど」
『どうやらその売人は秘密主義且つ隠れんぼが上手らしい。警察側も表立って捜査は出来ない。でもって、俺や理鶯はMCとして顔や名前も知られてる。特に俺は警戒されるだろうな。うちの組の下の連中を全く信用してない訳じゃないが、調べてる内にクスリに手を出しちまう可能性もないとは言えない。一応ヤクの類に手を出すなとは言ってあるんだけどな……。そこで、不本意ではあるがお前に依頼しようと言う話になってな』
「クスリと売人の正体を突き止めて欲しい、と?構わないけど」
『分かれば有難いが、流石にそこまでは言わない。少しでも有力な情報が欲しいだけだ。勿論、情報一つ、二つ得るのが簡単じゃないのも分かってる。場合によっちゃあ、一つの情報を得るのに自分の身が危険に晒される事態だってあるしな』
左馬刻の言葉に、私は内心「ああ……よく知ってるよ。何なら、身をもって知ってる」と呟きながら複雑な笑みを零す。
『情報が入り次第連絡してくれ。つーか、今更だが銃兎達の連絡先も教えてやる。いいか?依頼してる俺達に言えた義理じゃねぇが、深入りするな。こんなこと言うのもなんだが、前の半グレ連中みたいにお前が“女”ってだけでナメてかかって来る奴もいる。何なら、調査する時理鶯の奴や俺を離れた場所で待機させとくか?つか、その方が良い気がしてきた』
女性扱いに慣れていないせいか若干こそばゆいが、逆に言えば、私が女性扱いをあまりされなかった理由こそ、左馬刻の心配している部分を否定するものだ。
「いざって時はそうしよう」
『おいおい……。あと、依頼報酬なんだが……』
「それなんだが、依頼や報酬は仕事として必須だし有難いが、お前達にもらってばかりじゃあ私が探偵になった意味が無いだろう」
『は?』
「私も大人だし、ずっと面倒見られる訳にも行かない。自立して世話になった分は返そうとしてるのに、未だに私は助けられているわけだ」
私が言うと、携帯の向こうで左馬刻が「な……!?ばっかやろう!」と驚きと困惑の声を上げていた。
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イマツギ(プロフ) - 続きが楽しみです。お時間があれば更新頑張ってください! (2022年3月12日 12時) (レス) @page34 id: f5ff06f155 (このIDを非表示/違反報告)
紅 - 面白い!更新頑張って下さい! (2020年4月10日 13時) (レス) id: ceacd95bed (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:遙 | 作成日時:2016年2月6日 20時