黄瀬くん、あなたは私にとって……なんなんでしょうね？５

１４６　作戦2 ページ2

｢黄瀬くーん｣





甘ったるい声。




緩く巻いた髪を高い位置でツインテールにして。





それは中学校のときから変わっていなかった。



ツインテールを耳の横で揺らしながら千春が黄瀬君の方へと走ってくる。






…気持ち悪く、ない。



私は自己暗示をしながら心の中で何回も繰り返す。




私はもう大丈夫。

大丈夫。

大丈夫。






それなのに、足にはエレベーターに乗ったときのようなあの浮遊感が伝わってくる。







｢…A？｣





千春がいきなりパタリと足を止めて
周りを見渡しながらそう言った。



その瞬間私の背中は氷水をかけられたかのように冷たくなる。




今、千春は私の名前を呼んだの？




いや…落ち着け。



私の聞き間違いかもしれないでしょ？




それに、もし本当に私の名前を呼んだとしても私が動揺しちゃってたら、



当たりです。




ってアピールしてるようなものじゃない。






大丈夫だよね、こんなに人がいるんだ。




そう簡単にバレたりするワケがない。




｢…………黄瀬君、行くわよ｣







千春はまだ諦めてはいないようだったけど




それよりも大事な用事があるのか





黄瀬君に命令口調で指示を出した。

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