ボカロ曲を小説にしてみた〜第１弾〜

メルト　-*愛耶浬･あやりぃ*さんリクエスト- ページ43

「お母さーん、前髪ヘンじゃないっ？」
「大丈夫だいじょうぶ、ヘンじゃない」

昨日の夜、思い切って切った前髪。
今日君に、「かわいい」って言われるために。

「じゃあ、行ってきます！」
「いってらっしゃーい」

ピンクのスカートに、とっておきのお花の髪飾り。

今日の私は、かわいいのよ！
それもこれも、全てあなたのためなんだから！

「…えっ、うそ！」

待ち合わせ場所で待っていると、ぽつぽつと雨が降り出した。
そんな…今日は、晴れだって言ってたのに！

「最悪」

そうポツリと呟くと、丁度、傘を差したレンがやってきた。

「…雨、降ってきちゃったね」
「残念だね…折りたたみ持ってる？」
「うん………あ、」

やっちゃった！
持ってないって言えば、入れてもらえたかもしれないのに…

少し落ち込みながら、反射的に取り出してしまった折りたたみ傘を見つめる。

「…………」
「…えっ、レン？」

レンが傘を閉じてしまい始めたので、私は慌てて声を掛ける。

「しょうがないから、入ってやるよ」
「…なに、いってるのよ」

…どうしよう。
ドキドキしすぎて、目も合わせられない。

はんぶんこの傘の中で、時折触れる右手。
本当は、そのまま、繋いでしまいたいけれど。

でも、できないの。

「……何か、喋れば？」
「えっ…レンが、喋ってよ」
「えー…だって、Aが誘ってきたんじゃん」
「話題とか、ないし」

あーもう、私ってばかわいくないっ！
もっと、最近暑くなってきたねとか、何でもいいから喋ればいいじゃない！

本当は喋りたくてしかなくて、好きって言いたいのに…
この想い、届いて！

「…あ、前髪」
「あっ…分かる？き、昨日、切ったの…」
「分かるわかる！…似合ってんじゃん」
「そう、かな」

また、こうやって、私を苦しめさせて。
君が嬉しいことを言う度に、私はドキドキして苦しくなるんだよ？

それなのに、君は、そういうことを、無邪気に言うんだから。
もう…私ばっかりドキドキして、悔しい！

「…これもね」

そう言って、自分の頭を指差すレン。
その位置は、私がお花の髪飾りをつけている場所だった。

「…ありがと」
「どーいたしまして！」

微笑むレン。
やっぱり私は、君のことが――…

「(好きなの)」
「…ん？何か言った？」
「ううん」

まだ、言えない。
でも、いつか、言わせてね？

「……なんてね」


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