ボカロ曲を小説にしてみた〜第１弾〜

イカサマライフゲイム　-２- ページ15

『明日のデートには行かないで』
「…え」
『…行ったら死ぬよ、君』

頭が真っ白になった。

今までのことから推測すると、僕が死ななかった分、知らない人が犠牲になっていたはずだ。
つまり、今回、犠牲になるのは――？

「…そんな、」
『明日は家でゆっくりした方がいいと思うよ』
「でも、そしたら彼女が…！」

それに対してそいつは、何も言ってくれなかった。
そして、僕は――…

『――今、あの子、死んだよ』
「ッッ！！！」

彼女のデートの日。
僕は、彼女との約束を、破った。

そして、――彼女を殺したんだ。

「もう、いやだ……」

どうしてこんなことになったんだろう。
最初は雨が降るからって、それだけだったのに。
いつの間に、人が死ぬとか、そういうことになったんだろう。

そしていつの間に、僕は、人を殺していたんだろう。

『…大丈夫、もう、最後だよ』
「……」
『僕から君への、最後の通達だ』

その時そいつは、初めて「僕」と言った。
性別は男なのだろうかと、どうでもいいことを考えた。

『明日君は、死ぬよ』
「、え？」
『何をしても、死ぬよ』
「っ…だってお前は、僕が死なないようにしていたんじゃ…！」

『さようなら、僕』

その瞬間、最後の瞬間のそいつの声は、機械音なんかじゃなかった。

正真正銘、僕が今までずっと聴きなれていた声。
僕の、僕自身の、声、だった。

「…ああ、そうか」

そういうことか。

『無駄に足掻いたりせずに、せめて楽しい一日を過ごしなよ。死ぬのは夕方だから』
「……余計なお節介だな」

僕はそう言って、嗤った。
面白くもなんともなかったけど、嗤ってやった。

それは、嘲笑に近かった。

『それじゃあね、僕は行くよ』
「待ってろよ。…僕も、逝くから」

さようなら、愛しかったこの世界。

「…明日、雨は降るかな」


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