8 ページ33
--
｢すみません安室さん！卵が切れちゃったみたいで…
買ってきてもらっても大丈夫ですか？｣
ーーとのことで、現在僕は目標の卵を無事スーパーで購入し、ポアロへの帰路を急いでいた。丁度学生のお客さんが増える頃だ。早くしないと梓さんが困るだろう。
すぐそこの曲がり角を曲がればポアロに着く。
……が、しかし。偶然ちらりと見えた裏路地にやや不穏な光景が見えた気がする。
｢今から私たち遊びに行くんだよね。んー3万は流石に可哀想だから、1万でいいや。ほら、早くしなよ｣
｢………｣
｢何とか言えば？けーいちゃん！｣
(……またか)
見覚えのある少女と、彼女を囲む数人の女子高生。
この場面に出くわすのは二回目だ。卵のパックが入った袋を片手に彼女達へ声をかけた。
｢何をしてるんだい？君たち｣
｢…、！｣
はっと目を見開いたのは少女だけで、他の学生達は
温和そうな童顔の見知らぬ男に怪訝そうな顔をした。
｢別に友達と話してただけだから｣とぶっきらぼうに呟く一人に柔らかく笑いかける。
｢おかしいですね。友達は
友達のお金を強引に取ったりしない｣
｢………｣
やがて面倒になったのか、周りの女子高生は不機嫌そうにその場を立ち去っていく。鞄を腕に抱きしめて俯いていた少女にゆっくりと近寄った。
｢君も、嫌なら嫌だってちゃんと言わなきゃだめですよ。
この間だって僕がいたからよかったものの…｣
｢……はい｣
少女ｰｰｰｰ…佐伯さんは上目で僕を見つめた。
彼女を助けるのはこれが初めてではない。先日もこうして僕が仲裁に入ったのだ。
『私いじめられてるんです。名前が男みたいって馬鹿にされたり、生意気で気に食わないって言われたり……』
佐伯さんは最近ポアロに通い始めた常連客で、よくカウンター席に座っていた。……最初に彼女を助けた時、僕は微笑を浮かべてこう言ったのだ。
『…"景"って名前。
とても美しいと思うし、僕は好きだよ』
頭に浮かんだのは、かつて命を落とした親友の姿だった。
佐伯さんは揺らいだ瞳を瞬かせて唇を震わせていた。それから彼女は頻繁にポアロへ来るようになったのだ。
｢安室さん、助けてくれてありがとうございました。
今ポアロに行くところで…その、一緒に行ってもいいですか…？｣
好意を寄せられていることには薄々気付いていた。だけど彼女の想いに答えることは出来ない。
……答えるべき相手が、他にいるからだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 784人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「名探偵コナン」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
HALO - お互い実力は認めあってますし大丈夫ですよ！！同じ似た境遇ですからきっと共有すれば乗り越えられる素敵な夫婦になれますよ♪♪ (2019年3月21日 0時) (
レス) id: d6476dbe7d (このIDを非表示/違反報告)
てな(プロフ) - HALOさん» そうですよね…！よいお友達になれそうです！きっと乗り越えられたら強い夫婦になれそうですね(´∇｀) (2019年3月20日 23時) (レス) id: 46f0755694 (このIDを非表示/違反報告)
HALO - 降谷さんもきっと誤解を知ったら赤井さんといい関係築けそうですよね！！だから夢主ちゃんも乗り越えて降谷さんと幸せになって欲しいなぁと思います！ (2019年3月20日 23時) (レス) id: d6476dbe7d (このIDを非表示/違反報告)
てな(プロフ) - HALOさん» ごちゃごちゃしてまいりました…wそうなんです！降谷さんが赤井さんをはちゃめちゃに憎んでいるのと似ているような感じにしたかったんです(語彙力)憎すぎて毎日降谷さんのことばっかり考えてたらいいなあとか思っております (2019年3月19日 17時) (レス) id: 46f0755694 (このIDを非表示/違反報告)
HALO - 複雑になってますねw降谷さんもライが自殺を止められなかった事に対して殺したいほど憎んでいるのと同じな気もしますね!!夢主ちゃんが好きになってるなぁって思うし紙一重なのでしょうか？ (2019年3月18日 23時) (レス) id: d6476dbe7d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：てな
| 作成日時：2019年3月1日 0時
