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「ごめんコナン君。少しだけ二人きりに
してくれないかな…彼女と話したいことがあるんだ」

「……うん」



突拍子のない発言をした彼を諌めようかどうか
迷ったが、どうせ何を言ったって
この人がすんなり頷いてくれるわけもない。

迷った挙句、視界に入り込んだ
二つの靴を受け入れるしかなかった。

江戸川君が近くの病室に駆け込んでいき、
とうとうこの場には二人きりとなってしまった。



「久しぶり。相変わらず君は実験が好きだね」

「……話すことはありません」

「僕にはある」




本当に、何も変わっていない。

言ってないことを勝手に言い当てて。自分勝手で。



突っぱねた態度を取っていると
不意に微かな笑い声が耳に入り込んだ。

思わずその顔を見上げれば
「変わってないね」なんて苦笑混じりの呟きを
口にして、垂れ目の瞳を細ませた。



「……電話もメールも繋がらなかったから
苦労したんだ。君は逃げるのが上手だから、」

「貴方から逃げたわけじゃありません。
別れを告げただけです。ただそれだけ」

「はは、よく言うな。指輪も外してないくせに」




ちら、と下に向けられた視線を辿れば
しっかりと左手の薬指に嵌められた結婚指輪。

咄嗟に背中の後ろへ隠すと、
彼が意地の悪い笑顔を浮かべた。
そういうところが昔から気に食わなかった。



「虫除けです」

「ホー…」



納得はさらさらしてないようで、
ふつりと湧いてきた怒りをぶつける。



「話が終わったのなら帰ります。
二度と私の前に、現れないでください」








「……瑞沢先生?と、安室さん…?」



出口に向かおうとしていた足を止めたのは、
戸惑う様子を隠せず、私と彼を交互に見て
目を白黒させる江戸川君…のもう一人の保護者。



「ら、蘭さん……」

「えっと…お二人って、知り合いだったんですか?」



毛利小五郎の代わりによく授業参観に来ていた
娘の毛利蘭。そういえば彼女の母親が
ここに入院していると江戸川君が言っていたような、



「他人です。では」



彼とこれ以上話すことも無い、少なくとも私は。
婚姻届にもう一度名前を書くなんて以ての外。
安室という偽名も聞かなかったことにしよう。

そうと決まり、何かを言いかけた彼の横を
通り過ぎて今度こそ出口に足を進めた。




(さよなら。もう二度と会わないでしょうね)

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てな(プロフ) - まゆさん» わーありがとうございます!気づくの遅くなってすみません…!感動していただき嬉しみです(´∇`) (2019年3月10日 22時) (レス) id: 46f0755694 (このIDを非表示/違反報告)
まゆ - 完結おめでとうございます^_^面白かったです^_^最後は、すごく感動しました!これからも、頑張って下さい^_^ (2019年3月7日 14時) (レス) id: 406c27ad01 (このIDを非表示/違反報告)
てな(プロフ) - かずささん» ありがとうございます!結構端折ってた部分もあったので過去エピソードとか結婚後のお話を時間があったら書いてみたい!!と思ってます(゜▽゜) (2019年2月1日 23時) (レス) id: 46f0755694 (このIDを非表示/違反報告)
てな(プロフ) - れいさん» ぴえありがとうございます〜!50話を超えてしまったので気が向いたら続編を作ってみたいなとか思っております… (2019年2月1日 23時) (レス) id: 46f0755694 (このIDを非表示/違反報告)
かずさ(プロフ) - 私も結婚後の生活の話が読みたいです!できるならお願します! (2019年2月1日 22時) (レス) id: 189adfe0dc (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:てな | 作成日時:2019年1月20日 0時

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