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「あれ?瑞沢先生、こんにちは!」



なんてことの無い普通の一日だった。

少し実験で火傷をしてしまい、念の為病院に行けと
同僚に急かされて病院に来ていたのだ。


軽く処置をされ包帯が巻かれた右手を
ぼんやりと見ていれば、待合室の向こうから
見覚えのある生徒が走ってくるのが見えた。




「どうしてここに?」

「少し火傷しただけ…江戸川君は?」

「僕は小五郎のおじさんの奥さんが入院したって聞いて、蘭姉ちゃんと一緒にお見舞いに来たんだ」

「そう」



テストで満点を取れるはずなのに、わざとらしく
回答を間違える江戸川コナンという生徒は
良くも悪くも頭にこびりついている。

彼の保護者である毛利小五郎の妻は
現在別居していると聞いていたが、存外復縁は近そうだ。



「もう帰るの?」

「元々来る予定じゃなかったの。小林先生に無理矢理追い出されて来ただけだから…また学校に戻るわ」




不思議そうに小首を傾げる江戸川君に
別れを告げて、座り心地の悪いソファから
腰を上げた。……何故か妙に悪寒がする。




「………」




悪寒の正体はすぐに顔を出した。



頼むから人違いであっていてという私の願いを
裏切るように、棒立ちしていた彼は
覚束無い足取りで歩みを進めてくる。




(…出来ることなら、死ぬまで会いたくなかった)







.









「ーーー…A」





最後に顔を見た時から何も変わっていない。
透き通った青い瞳も、私の名前を呼ぶその声も。


幽霊でも見たような顔をした彼に、
ノーリアクションで仏頂面を崩さない私。
明らかにおかしい二人組に江戸川君は困惑していた。



「瑞沢先生…?この人と知り合いなの?」

「いいえ」



「もう他人よ」と虚ろげな瞳を閉じて
言い聞かせるように呟いた。当然彼の顔も見ずに。








.









「…彼女は、僕の奥さんだった人なんだ」









柔らかい彼の声に目を見張った江戸川君、
きっと江戸川君は彼の本当の名前すら
まだ知らないのだろう。









ーーー降谷零。

それが、離婚した元夫の本名である。






.

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てな(プロフ) - まゆさん» わーありがとうございます!気づくの遅くなってすみません…!感動していただき嬉しみです(´∇`) (2019年3月10日 22時) (レス) id: 46f0755694 (このIDを非表示/違反報告)
まゆ - 完結おめでとうございます^_^面白かったです^_^最後は、すごく感動しました!これからも、頑張って下さい^_^ (2019年3月7日 14時) (レス) id: 406c27ad01 (このIDを非表示/違反報告)
てな(プロフ) - かずささん» ありがとうございます!結構端折ってた部分もあったので過去エピソードとか結婚後のお話を時間があったら書いてみたい!!と思ってます(゜▽゜) (2019年2月1日 23時) (レス) id: 46f0755694 (このIDを非表示/違反報告)
てな(プロフ) - れいさん» ぴえありがとうございます〜!50話を超えてしまったので気が向いたら続編を作ってみたいなとか思っております… (2019年2月1日 23時) (レス) id: 46f0755694 (このIDを非表示/違反報告)
かずさ(プロフ) - 私も結婚後の生活の話が読みたいです!できるならお願します! (2019年2月1日 22時) (レス) id: 189adfe0dc (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:てな | 作成日時:2019年1月20日 0時

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