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8話 ページ10

「くだらねぇこと考えんなよ」

耳元で響く、落ち着いた声。
ほんの一瞬下向いた気持ちを、どうやら見抜かれてしまったらしい。

「…いつもいつも、頼ってばかりでは駄目だと思って…」

正直に、気持ちを伝える。見抜かれた以上、左馬刻さまに隠し事は通用しない。

ぎゅっと、腕の力が少し強まる。

「大人しく頼りゃいいんだよ。変な遠慮してんじゃねぇ」

優しく囁かれ、頭を撫でられる。

あぁ、本当にこの人は、

「私のこと、甘やかしすぎです…」

大事に大事に、丁寧に慈しんで、愛して下さるから、

「左馬刻さまがいないと、生きていけなくなっちゃいます」

重荷になりたくないのに、どんどん抜け出せなくなっていく。

「上等だ、なっちまえよ。ドロドロに甘やかしてやるから」

言葉と共に、優しく髪に口付けが落とされる。

温もりが心地よくて、愛されるのが嬉しくて、きっと今、私の表情は…

「締まりねぇ顔しやがって…」

そう、締まりのない……ーっ!?

「人前でイチャついてんじゃねぇぞ」
「うわわわ…す、すみません‼」

しまった…皆さんの前なのに…

「全く…この短時間で、こちらの存在を忘れてしまったのかと思いましたよ」
「あ…?うるせぇうさポリ公…」
「…本当に、Aの前では大人しいですね。いつもこれくらいならいいんですけど」
「調子乗んなや」

そうだ、せっかく銃兎さんも理鶯さんも見に来て下さったんだ、ご挨拶しなくちゃ…‼

察してくれたのか、左馬刻さまはゆっくりと腕を解いてくれた。

「銃兎さん、理鶯さん!来て下さってありがとうございます!」
「お疲れ様です、A。素晴らしいステージでした」
「お疲れ様、A」
「?」

笑顔と労い、称賛の言葉をくれる銃兎さんと理鶯さん。

そして何故か、理鶯さんに手招きをされる。

誘われるまま傍に寄れば、優しい手つきで手を取られた。

「相手を攻撃する時だが、指の付け根…この骨の辺りで目を狙うと効果的だ」

そのままするりと、指の付け根辺りを撫でられる。

まさかの、護身術指南。
流石元軍人さん…詳しい…

「よければ小官も、護身術ならば教えられる。身を守る術を持っているに越したことはない」
「ふふっ…軍人さんに教えてもらえるなんて、私、強くなれそう」
「程々にしとけ…怪我させんじゃねぇぞ理鶯」
「過保護だな左馬刻」
「うるせぇ」

賑やかな言い合いに、自然と笑みが浮かぶ。

穏やかな日常の幸せを、そっと噛み締めた。

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和三盆糖(プロフ) - 香織さん» 閲覧、コメント誠にありがとうございます。ベタ甘な左馬刻さまが刺さったようで嬉しいです…!!マイペース更新にはなりますが、引き続きお楽しみいただけましたら幸いです。 (2021年6月6日 17時) (レス) id: 4f53f84ba0 (このIDを非表示/違反報告)
和三盆糖(プロフ) - さちゃんさん» コメントいただいたのに直ぐに気付くことができず、お返事出来ておらず申し訳ございません。かなり時間が経ってしまったのでもう届かないかもしれませんが…閲覧、コメント誠にありがとうございます。どうにか完結まで頑張りますので、また遊びにいらして下さい。 (2021年6月6日 17時) (レス) id: 4f53f84ba0 (このIDを非表示/違反報告)
香織(プロフ) - 久々の更新ありがとうございます!とても気になる展開と安定の左馬刻さまっぷりで最高です。続きを楽しみにしてます! (2021年6月5日 23時) (レス) id: be1cefb69b (このIDを非表示/違反報告)
さちゃん(プロフ) - とてもすきですT_T更新楽しみにしています>_< (2020年4月6日 1時) (レス) id: ffa613b322 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:和三盆糖 | 作成日時:2019年3月3日 19時

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