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着替えと荷物を取るために
虹村の家に行ってから
空港に向かうバスへ乗った。

虹「つか本当に来るんか」

貴「当たり前じゃん、次いつ会えるか分かんないし」

虹「そーかよ」

虹村はもう何年も見ることもない景色なのかなぁ、
と思いながら住み慣れた街を眺めていたけど
そう言えば私も同じだった。

空港に着くと

虹「あのさ」

貴「なに」

虹「なんかあったら連絡しろよ」

改まったように、そう言った虹村。
面倒見がいいって、こういうとこ。

貴「うん」

虹「まーなんにもなくてもたまには連絡してほしいけどな」

貴「うん」

虹「それとさ」

突然真面目な顔になる虹村。

ちょっと身構える。

貴「うん」

でも

虹村は諦めたような顔をして、
ふ、と笑って言った。

虹「…やっぱなんでもねぇわ」

貴「そっか」


越えようとした?

越えようとして
やめた?

もう
越えられない

なんとなく、それが分かった

それから関口と久保田も来て
3人でお見送りした。

関「ホームシックになんなよ」

久「寂しくなったらいつでも帰ってこいよ」

虹「すぐ帰れる距離じゃねえから逆にねーわ」

関「Aが寂しくて死んだりしてな」

そう言って3人は私を見た。

久「なんでずっと黙ってんだよ、最後だろ〜?」

虹「元気出せって、な?」

貴「ずっと元気だってば」

関「今更拗ねんなって」

虹村に会えるの
もしかしたら最後になるかもしれないのに。

なんでこんなことしか言えないんだろう。
なんで虹村は言うのをやめちゃったんだろう。

モヤモヤとそんなことばかり考える。

今更そんなこと考えたって
虹村は待ってくれないのに。

私の異変を察したのか、

久「じゃ、最後はお2人でドーゾ」

そう言って関口と久保田は
虹村に別れを告げて去っていった。

虹「A」

貴「なに」

虹「ごめんな」

貴「何が」

虹「俺がどうしようもなくて」

貴「そんなこと、」

ない

どうしようもないのは私だ

このままでいいって何度も思ったのに

超えてしまいそうになることなんて
たくさんあったのに

最後だからって
期待してしまったから

虹「幸せになってな」

無責任なその言葉が私を突き放す。

それが、虹村の答え。

虹「じゃーな」

最後に私の頭を撫でて、
虹村は搭乗ゲートに消えていった。

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作者名:夢莉 | 作成日時:2019年8月14日 16時

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