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ミネラルウォーターで口をゆすいでいたスバルが、遅れてそのダンスの輪のなかにくわわる。
あっという間に、その場に馴染んだ。
「朝霧先輩との1週間で、すこしは『他人の目』ってやつを視野に入れられるようになった気がする。
以前の俺と同じだと思ったら、おおまちがいだからな?」
たしかに、スバルは周りとあわせられている。
単体でも力強く輝くけれど、周りのみんなの耀きを反射することで、さらに煌(きら)めく。
ほんとうに、アイドルになるために生まれてきたようだ。
天性の才覚で、最高に輝く。
スバルは、やっぱり野に咲く花みたいに自由で天然で____魅力的。
神さまから愛された、希有な才能をもった男の子なのである。
その眩しい笑顔が、『Trickstar』にとって何よりの宝物だった。
単純な技術ならば、北斗のほうが上手だろう。
しかしスバルは、たまに勝手に驚くほどアレンジするけれど。
作り手の想像すら軽々と凌駕(りょうが)するような、光を放つ。
____まるで、【彼】みたい......____
そう思ってしまうのは、当然のことなのだろうか。
無意識にそう思い、ハッと気がつく。
何、考えてるんだ...と。
(切りかえないと、ね)
現実に戻されると、いつの間にか真緒もくわわっている。
並んで、今、彼女の目の前で、輝く。
「どう、どう? 俺たちのパフォーマンス♪」
自由に踊り終えた4人。
元気なスバルに、すこし疲れたようすの北斗と真緒、そして息の荒れている真。
これでも真は、初めの頃と比べるとかなり体力もついてきた。
「そうね。スバルくんは、実力面ではあまり言うことはないけれど、『ぐいぐい』前に来すぎてるわ。
もうすこし、周りを見る必要があるわね」
「う〜ん、自分ではよくわかんないなぁ......。でも、わかった☆ まだまだ特訓しよ〜!」
スバルは、ひとりで突っ走りすぎている。
多少は周りを見ることを意識していたようだが、最中、その気が弱まっている部分があった。
「北斗くんは、もっとやわらかく、柔軟にパフォーマンスしてほしいわね。遠慮がちになってるの。
周囲に気を遣うのも大切だけれど、まずは、自分自身を主張しなさい」
「......はい、やってみます」
当てはまる部分があると、自覚しているのだろう。
すこし考えを巡らせ、返事を返した。
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作者名:白銀桜夢 | 作成日時:2018年8月9日 18時