あんさんぶるスターズ短編集 (ページ9)

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羽風薫拗らせるページ9

羽風さんside

｢…もう、俺にしない？｣

目を見開くAちゃん。そりゃそうだよね、こんな唐突に。

｢いやぁ…朔間さんが好きで泣くくらい悩むならさ、もう俺にしちゃわないかなって。俺もAちゃん好きだし？ほら、利害の一致ってやつ？｣

まだ目尻に残る涙を拭いながら、Aちゃんは俯く。小さな肩を震わせて、強く手を握って。もう泣かないようにって。

｢ごめんね、いきなり。｣

｢…いいんですか？｣

｢…え？｣

｢先輩を利用するような、そんなことして…｣

｢まさか…受けてくれるの？｣

｢…もう、疲れましたから｣

力なく笑うAちゃんはとても儚げで。少しでも目を離してしまえば、消えてしまう気がした。そんな顔をさせた朔間さんを恨めしく思う。

｢おお、二人とも付き合いだしたのか。末永く、幸せにの？二人とも｣

｢はいはい、ありがとうありがとう｣

ほんと、Aちゃんが幸せにして貰いたいのは俺じゃなくて朔間さんだってのに。

俺じゃ、朔間さんには敵わないよ。今回だって、弱ってるのにうまくつけ込んだだけだしさ？

Aちゃんは、今頃後悔してんのかな。一時的にでも俺を選んだこと。それはちょっと悲しいな。けど、Aちゃんのあの笑顔が頭に焼きついて離れないんだ。

後悔してもしてなくてもさ。そんなもの忘れちゃうくらい楽しませてあげる予定だから。

だから、あんなに綺麗に、そして歪に笑わないでよ、ね。