〜第一章〜 海 【歌い手】 2

【96】似た者同士 ページ46

センラ side


「お疲れ様」
『お疲れ様です。』


片ずけが終わったステージ。
先ほどとは違う沈黙が流れている。疲れと寂しさが入り交じった空間だ。



『ありがとうございました』
「急にどうした笑 それより、体調は平気？」



本番中も正直気になっていた。
無理をしすぎてしまう性格。

普通なら「やめとく」と言い出すようなものなのに



『大丈夫ですよ？』


微笑む笑顔も
すぐに消えてしまいそう


「頑張ろうな」


すると後ろからガヤガヤとした声が聞こえてくる。



「お疲れ様です」
「お疲れです！！」


こいつらと奏でる音楽は
意味がわからないほど楽しく高揚して。


「どうしました？」
「何でもないよ」


これからが、楽しみでたまらなかった。




＿＿＿＿＿
ピース side



「どうだった？初の大勢でのライブ。」


ライブも終わり、電車に揺られて最寄駅に着くと、
改札口で米津さんが迎えに来ていてくれた。


『楽しかったです。この感覚は、手放したくないです』

「それは良かった」


米津さんは少し寄って行ってと、家にお邪魔した。
久しぶりの感じ。心が落ち着いた。


「この先、体調を崩したりしたらライブは三日後までしか許可しない、これは決定事項だ」

『…はい。』



米津さんの目でわかる。怒りの目だ。


「心配してるんだ。Aはバカじゃない。他の人よりも責任感があると俺は思っている」

「倒れなきゃ、ここまで怒ってないよ」




「…話は終わり。お疲れ様」



いいや、
待て待て待て。

米津さんが前触れもなく説教をすることも
こんなにポンポン言葉を話すこと、あったか？



『熱でもあります？』



そう問いかければ米津さんは飲み物を用意する手を止めた。



「無い」

『言葉が単調です』

「無い」

『舌ったらずの子供みたいですよ』



無理やりおでこを触れば熱い
あなただって、僕のことを沢山気にしていてくれたけれど



『人の事、言えないじゃ無いですか。』

【97】猫→←【95】力

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す