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Aは謙虚な分、いっちゃん……斎宮みたいな、自覚と誇示の高いタイプよりは扱いやすいかもしれんが、余りにも自覚が無さすぎて、斎宮とは別方向に面倒臭い。
……俺の幼馴染み共、どっちも『天才』なのはまぁ良いとして、どうしてこうも両極端なんだよ。勘弁してくれや。
思わず額に手を当てて上を仰ぐと、近くから、小さな拍手と、ククク、と噛み殺したような笑い声が聞こえてきた。
「――いやはや。流石と言うべきかのう、転入生の嬢ちゃん。どうやら『そちら』の腕の方も相変わらずのようじゃな、安心したぞい♪」
紅い瞳を細めながら、酷く楽しげに笑う男――『三奇人』の朔間零。
その発言で、場の注目と視線が一気に彼へと集まる。
「うっわ、朔間先輩……」
「ああ、そういや今日は居たんだっけか、あのエセ老人……」
と小声で囁きあいながら、Aと譲羽があからさまに顔を顰めたが、朔間は意に介さず小さく笑う。
「しかし、まぁ、これで証明されたかのう？
転入生の嬢ちゃんが『プロデューサー』として選ばれたのは、天祥院くんらの身内びいきというわけでは断じて無く……この純然たる『才能』を買われてのことだと、な」
朔間の言葉に、数人が息を呑む気配がした。
Aは僅かに眉間を寄せたが、何も言わずに周りを見ている。
……あの顔は「いや『才能』って何よ」とか思ってんな、多分。だから気付けって。
突如として言及された天祥院の方はと言えば、顔色1つ変えず、普段通りの凪いだ笑みを浮かべたまま、その場に佇んでいる。
その堂々たる立ち姿は、確かに、『皇帝』と呼ばれるだけの威厳と風格――そして畏怖をこちらに与えるものだった。
「――んん〜っ、ファンタスティック！！
この私をして、言葉を失い打ちのめされる程の感激と興奮を味わえるとは！ これぞ正しくAmazing……！
あなたの奏で紡いだ愛と光に、最大限の感謝と賞賛を捧げましょう……☆」
「え？ あ、うん、有り難う日々樹……？」
と、そんな空気を掻き乱すかのように、突如としてAの背後に現れた日々樹が、その足元に恭しく跪き、紅い薔薇の花束を差し出していた。
……いつの間に近付いていたのやら。本当に気配を悟らせねえ奴だな、油断も隙もない。『三奇人』と呼ばれるだけはある。
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作者名：姫結 | 作成日時：2018年8月28日 13時
