1-7 ページ7
.
エイジやトミーが黙って彼の方を見返した。
「矛盾してる」
嘲るようにはじめが笑う。
「かっこわりー」
「生きて帰りたいだけだろ」
はじめを見据えてマホトが言った。
「何だよ。 どっちの味方？」
「敵は、犯人だろ？」
二人の視線が冷酷に交わる。
「じゃあ何でお前そっち側についてんの？」
トミーが尋ねた。
「……逃げれると思ってねぇからだよ」
マホトが答えると
「はぁ!?」とはじめが怒りを顕に立ち上がった。
「敵は犯人なんでしょ？ だったら戦えよ！」
マホトが視線を上げ、
先ほどのように見据えて言う。
「さっきの、見てなかったの？」
────その言葉だけでもう充分だった。
彼らは再び玄関前に移動した。
カンタの持つスマホは
相変わらず『圏外』のまま。
「本当に出られないのかな……」
「────試してみる？」
諦めたような声音のトミー。
「おーい」
カンタが少し声を張る。
外に人の姿はない。
「おーい！」
木々が風に揺れるだけだ。
「助けてください！ 人殺しがいます！」
「おぉーい！」
カンタ、トミー、エイジも叫ぶが
虚しく鳥の声や風の音が響くだけ。
「……」
人の気配はまるでない。
一同に沈黙が落ちる。
「……死体」
ぽつりと思いついたようにカンタが呟いた。
それだけで言わんとすることが伝わったようで
彼らは歩き出した。
*
さぁやの傍らに座り込んでいると
またも足音が近づいてきた。
探索に行っていた人たちが戻ってきたのだろうか。
「……Aさん」
その声に顔を上げると、カンタさんに加え、
長髪の男子、赤い髪の男子が立っていた。
カンタさんが私の名前を知っているということは
Twitterで繋がりがあったということを
彼の方にも認識されていたんだ。
「その子の死体を……玄関先に置いておけば、
もしかしたら誰かが気付いてくれるかもしれない」
カンタさんの言葉を
脳が受け止めることを拒んだ。
「え……？ ……何、言ってるんですか」
なんて残酷なことを言うのだろうと
怒りすら覚えたほどだ。
それはつまり何の罪もないのに殺された親友を
見せ物のように扱うってことだ。
「何言ってるんですか？」
もっと強く言い返したいのに
悲しみが込み上げて声が弱々しく震えてしまう。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 192人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：小桜ふわ
| 作成日時：2019年3月19日 9時
