一ヶ月振りの ページ5
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"君はわかりやすいよね。誰だって承認欲求が強くなる時期はあるさ。"
承認欲求。
そんな、認めてもらいたいなんて思ったことはない。
確かに実力を上の人間に認めさせるために努力を惜しまなかった。でも、この場合は承認欲求なんかではないはず。
よくわかんねぇ。
大学で会ったのを最後に一ヶ月間アイツに会うことは無かった。
店にも何度か気分転換に行った。
最初はアイツがいると思うと憂鬱だったものもしばらく顔を見ないと少し不安になる。
この不安は一体何なのか。
「よっ」
「…ッス」
「久しぶりなのに相変わらず湿気たツラしてんねぇ〜。アイスコーヒーでいい?」
久しぶりに見かけたソイツは店の制服であろうシャツとサロンを巻いて立っていた。
店主のおばさんはいない。
ちらほら客がいる様子から店は営業しているようだ。
「はぁ〜休憩、疲れた」
「なんでわざわざここに…」
「いいじゃん。見知ったお客はジュンちゃんしかいないしぃ?」
間延びした気だるげな話し方。
少しハスキーなブレス混じりの声。久しぶりに聞いたその声になぜかホッとしてしまった。
最近Eveとしての活動が盛んな上に試験期間だったから疲れてんだな、俺。
「…どこ、行ってたんすか」
「何、寂しかったわけ?」
「んなわけねーっすよ。世間話っす」
何も考えず無意識に飛び出した自分からの話題に少し戸惑う。
ニコニコ笑って今日も両手で頬杖をつきながら俺を見るその人だって相変わらずだ。
「関西に出張、かな」
「仕事してんすか?」
「まぁ〜ね!意外?」
「そりゃまぁ」
グラスの中の氷がカラン、と音を立てて溶けた。
外を眺めてもまだ口角が上がったまんまのこの人は何を考えてるか全くわからない。
俺よりバカそうなのに、俺の思考ばかり読んで正直鬱陶しい。
「またしばらく明日から私いないからねぇ」
「…そっすか」
「寂しい?」
「全然」
「嘘でも寂しいって言えや」
眉を吊り上げて笑う悪戯っ子な少女のような顔。
本当に不思議だ。
この人は何者なんだ?
「寂しかったらいつでも電話してきていいよ〜」
「かけねぇっすよ」
「つれないねぇ。ジュンちゃんモテるのにもったいないね?性格に難アリって感じ」
私と似てるね?
そう言った彼女の笑顔はどこか悲しげに見えた。
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接久(ツグ)(プロフ) - amiさん» コメントありがとうございます!引き続き読んでもらえてとても光栄です。主=変人を心がけ追い求めながら試行錯誤して書いております(笑) これからまた更新し始めましたので今後ともよろしくお願いします! (2018年9月1日 0時) (レス) id: 4b172a7e6c (このIDを非表示/違反報告)
苺果汁(プロフ) - 澪@接久さんの書く作品どれも楽しく読ませていただいております!この作品…まだ完結されてはない、ですよね? (2017年11月12日 17時) (レス) id: d7b47249f9 (このIDを非表示/違反報告)
のど飴 - とても面白かったです!!ジュンくん、尊い(´¶`)そして、夢主ちゃん奇人←これからも、頑張って下さい(´∀`)b (2017年8月21日 2時) (レス) id: 8c675f615a (このIDを非表示/違反報告)
ほたる - ジュンくんが可愛いです!!更新頑張ってください!!! (2017年8月15日 21時) (レス) id: 836cda0430 (このIDを非表示/違反報告)
ami(プロフ) - 澪@接久さんの『おひいさんと私』から来ました!前回と同じく、面白そうな話ですね!!そして、夢主ちゃんの変人っぷり(笑)次の更新を期待しています。これからも、頑張ってください。応援しています♪ (2017年8月14日 13時) (レス) id: 3e5b4b1383 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:澪@接久 | 作成日時:2017年8月14日 6時