私の大好きな人 ページ15
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「アンタ、友達作りなさいよ」
母さんにそう言われ始めたのはちょうど一年前だっけか。
特定の仲良しな友達なんて今まで作ったことのない私は大学を卒業してから友達と呼べるような人はいなかった。
いないからと言って不便はしてない。
無駄なお金や時間を使わずに済むし、ひとりが好きな私には気楽で嬉しい。
でも、いつからだろう。
「A、もうやめよう」
「…え？」
「俺を追いかけるだけのAに魅力を感じないんだ。そんなお前をずっと近くで見ながら遠くへ進むなんて、俺には出来ない」
孤独が、怖くなった。
必死になって追いかけた背中は確かにいちばん近くにあったのに、いつだって遠かった。
気づけば、近づくどころかもう手の届かないところまで遠く遠く離れてしまった。
慰めてもらえるような友達はいなかった。
話を聞いてもらえるような先輩も、後輩も。
「何湿気たツラしてんだい。たまにはゆっくり休みなさいな。やっと追いかけなくてよくなったんだから」
小さい頃からお気に入りの私の席。
何かあれば膝を抱えて座る私の元にいつも母は小さなクッキーとホイップを浮かべた甘くて暖かいココアを運んでくれた。
私は母さんが大好きだ。
大好きなんだ。
「余命、ですか？」
元々足が悪かった母の通院頻度が上がったのはあの言葉を言われた一年前から。
その半年後、主治医に宣告されたのは母に残された時間だった。
それから何ヶ月も掛けて闘病生活を送りながらも母は店に立ったり入院したりを繰り返した。
「ねぇ、母さん」
私、友達が出来たんだ。
常連の漣ジュンくん。
今度ジュンちゃんのライブで私も演奏するんだよ。
母さん、よく褒めてくれてたよね。
私のバイオリン。
私がバイオリンを始めた理由も続けた理由も母さんが褒めてくれたからだよ。
ねぇ、母さん。
「もう…もう無理しなくていいんだよ。体を大事にしてよ。店に立たなくていいよ、ねぇ」
ボロボロと零れ落ちる涙と、歪んだ視界の中で微笑む母。
電動の車椅子で動くにもつらそうなのに、何してるの。
にっこり笑って私に差し出したのはいつもの暖かいココア。
私は泣きながらも無理矢理笑ってそれを受け取る。
「アンタが泣いてるとき、こうして慰めてくれる人が出来て安心したよ」
私の居場所だから、手放さなかったの？
ねぇ、母さん。
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接久(ツグ)(プロフ) - amiさん» コメントありがとうございます！引き続き読んでもらえてとても光栄です。主=変人を心がけ追い求めながら試行錯誤して書いております(笑) これからまた更新し始めましたので今後ともよろしくお願いします！ (2018年9月1日 0時) (
レス) id: 4b172a7e6c (このIDを非表示/違反報告)
苺果汁(プロフ) - 澪@接久さんの書く作品どれも楽しく読ませていただいております！この作品…まだ完結されてはない、ですよね？ (2017年11月12日 17時) (レス) id: d7b47249f9 (このIDを非表示/違反報告)
のど飴 - とても面白かったです!!ジュンくん、尊い(´¶`)そして、夢主ちゃん奇人←これからも、頑張って下さい(´∀`)b (2017年8月21日 2時) (レス) id: 8c675f615a (このIDを非表示/違反報告)
ほたる - ジュンくんが可愛いです！！更新頑張ってください！！！ (2017年8月15日 21時) (レス) id: 836cda0430 (このIDを非表示/違反報告)
ami(プロフ) - 澪@接久さんの『おひいさんと私』から来ました！前回と同じく、面白そうな話ですね！！そして、夢主ちゃんの変人っぷり(笑)次の更新を期待しています。これからも、頑張ってください。応援しています♪ (2017年8月14日 13時) (レス) id: 3e5b4b1383 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：澪@接久 | 作成日時：2017年8月14日 6時
