気だるげ女と俺。【漣ジュン】

俺にはまだわからないもの ページ14

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「へぇ、じゃあジュンはその人のことが好きなんだ」





ショッピングモールの有名なカフェの一角で放たれた言葉に俺は飲んでいたカフェオレを吹きそうになった。




「…なんでそうなるんすか」

「いやぁ、誰だってきっとそう思うよ？ね、日和」

「うんうん！ジュンくんにもついに春が来たね！」

「…うるせぇっすよバカ夫婦」




オフの日ということで久しぶりに買い物に付き合ってほしいと呼び出された先には巴夫婦。



幸せそうに奥さんにベッタリくっつくおひいさんに心底大きなため息が出るし、正直鬱陶しい。



奥さんがまんざらでもないのが不思議だ。




「あ、日和。そろそろプレゼント包装も終わるから取りに行ってきて」

「ほんとだね！待っててね！」

「へぇ、おひいさんも頼もしくなったもんすね〜」

「まぁね。最初はちょっとした道さえ覚えてくんなくて大変だったんだけどなぁ」



苦笑いを浮かべる奥さんの表情の中には幸せそうな色が見えた。


なんだかんだ言って上手くやってるようでよかったと安心する。




「その人のことで一日中イライラしたりするんでしょ？ましてやそんな言葉言ったりもしてさ。それだけ目で追って考えてしてるのに、好きじゃないなんてただのお節介だよ」

「…お節介なのはおひいさんのせいっすよ」

「それもそうだったね！」




あぁ、この夫婦ほんと癖の移り方がわかりやすい。



ため息をついて外を見るとこれまた偶然。


Aさんがこちらに向かって歩いてくる姿が見えた。




思わず驚きながらも目で追っていると向こうもこちらに気づき、控えめに手を振って笑っている。




が。




「へぇ、あの人？」

「…そっすよ」

「超美人じゃん！日和みたい」

「なんでそうなるんすか」




なぜか得意げに笑う奥さんに少し疲れを感じながら再びAさんに目を戻すと、驚いていた。



いや、驚いていたというよりもどこか複雑な顔をして俺を見ていた。



そんな顔も一瞬で、すぐまたあの無理矢理貼り付けた歪な笑みを浮かべて来た道であろう方向へ戻ってしまった。




俺はその意図がわからず不思議に思っていたが、戻ってきたおひいさんがあまりにも騒がしくてそのことをすぐ忘れてしまった。





＊





風呂上がりと同時に鳴り響く携帯。



手に取って表示される名前を見るとAさんだった。



また呼び出しかと思って出てみると意外にも聞こえてきたのは混乱した泣き声だった。




「助けて、ジュン…っ」

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