【鬼灯の冷徹】子狐こんこん肆

子狐、女同士で喧嘩しました。 ページ10

｢鬼灯様！大変です！｣

獄卒に呼ばれた鬼灯は直ぐに裁判所に向かうと

近づくにつれてどんどん騒がしい声が聞こえ

その中にAの声もあるのがわかった。


｢私に教養が足りないのは認めるけど私の家族を悪く言うことないでしょ！！？｣

｢だからって叩くことないじゃない！！｣


今にも掴み合いしそうなAと梅子を唐瓜と茄子が間で必死に抑えており、

梅子の平手がAの頬にバチンッと大きな音を出して当たる。

｢お返しよ！野良狐！！｣

｢いった〜！この裏表女！！｣

Aも更に叩き返し、遂にはベチベチと叩き合いになってしまう。

二人の間では｢おいやめろって！！｣と唐瓜も茄子も力の限界が近くて顔が真っ青であった。






｢いい加減に…しなさい！！｣




鬼灯がAと梅子の首根っこを掴んで一喝すると

二人はビクリと体が跳ねた後我に返った。

｢鬼灯様聞いて下さい！Aさんったら私の事打ったんですよ！？｣

｢そっちが挑発してきたからでしょ！！｣



｢二人共そこに座りなさい｣

鬼灯の威圧により、二人は｢はい｣と返事をしてすぐにその場に正座した。



｢で、先に手を出したのはAさんですね？｣

｢はい｣

｢そして梅子さんが挑発をしたんですね？｣

｢はい｣


鬼灯は二人の前にそれぞれバサリと紙の束を置き、

｢後でそれぞれから調書は取ります。

そして明日、2人共始末書を提出するように

しっかり頭を冷やしなさい｣

紙の束を手にとったAと梅子はフンッと顔を逸らした。







｢ではこれにて終わります｣

梅子の調書を終えた鬼灯がメモをした紙類をまとめていると｢あの…｣と梅子が話しかけた。

｢婚約者なのに冷たいんですね。すぐに向こうの味方すると思ったのに｣

｢婚約者である前に彼女も社員の1人です。

誰と揉めようがそれなりの処罰は下しますよ｣


そう言った後に鬼灯は梅子へ頭を下げた。

｢そして、これはAさんの婚約者として謝罪します。

誠に申し訳ありませんでした｣


顔を上げた鬼灯の表情に梅子はヒュッと息を飲み、顔を青ざめた。

今にも締めあげられそうな圧に体が動かない。


｢しかし、あの人の事をよく知りもしないのに傷つけたことは許しませんよ｣










｢Aさん、調書をとります｣

鬼灯に呼ばれたAは小さな個室へと通された。

少し時間が空き、自分のしでかした事の大きさを自覚している。


｢…私、後悔してませんから｣


鬼灯を見上げ、そう告げた。

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