【鬼灯の冷徹】子狐こんこん肆

子狐と女の戦い。 ページ8

鬼灯とAが婚約をしている事は一部の獄卒達は知っているが、まだ知らない者は多い。

それ故にそれぞれ異性にモーションをかけられる事があり、

知らない者はともかく、知っているのに声をかけるのは命知らずのバカと言われているのだ。




｢鬼灯様〜！これ報告書です｣

最近衆合地獄に入ってきた獄卒の女の子。

その子は働き者でなかなかの才能があると幹部らの中で一目置かれていた。

勿論鬼灯もである。


｢ご苦労様です。はい、確かに｣

｢今度衆合地獄の事務所に顔出して下さいよ〜｣

ポンッと鬼灯の肩に置かれた可愛らしい手は

普通の男だとドキリとくるものだが、仕事モードの鬼灯には通用することはなく

一切気に留めることなく仕事を続けた。


｢地獄太夫にも仕事の件で用があったので今度伺います｣

｢私楽しみにしてますね〜｣


新米獄卒、梅子は鬼灯を狙っていると獄卒達の間で密かに噂されていた。

書類を提出しに訪れていたAも噂を耳にしており、そんな子が自分の婚約者にベタベタしているのは気持ちのいいものではない。


｢あの、そろそろいいですか？｣

Aの不自然な満面の笑顔に近くを訪れていたシロ達は小さく悲鳴を漏らし、

鬼灯も｢Aさん｣と少し違う反応を見せた事に梅子はムッと面白くなさそうな顔をする。

書類を提出し、鬼灯が背中を向けた瞬間

Aと梅子の間で視線がバチバチとぶつかり合っていた。


実はこの二人は一度すでに闘り合っていた。






｢え〜パウンドケーキくらい簡単ですよ｣

数日前、鬼灯や閻魔大王に手作りのお菓子を差し入れした梅子は

美味しそうだと声をかけたAにクスリと笑ってそう言ったのだ。


｢やっぱり、結婚するなら奥さんやお母さんが手作りお菓子作れる方がいいじゃないですか｣


料理も修行中でお菓子作りなんて未知の世界であるAにはグサリと刺さり

梅子はAが明らかにダメージを受けている事を分かって更に追い討ちをかけた。


｢料理が不味いって離婚案件でよくあるみたいですし、結婚までに早くなんとかした方がいいですよ｣


しかし、言われっぱなしでAも終わらなかった。


｢でも鬼灯様は特に気にしないみたいですし、少しずつでいいって言ってくれたんですよ。

今度一緒にお料理の勉強しますし｣


互いに笑顔だが雰囲気は殺伐をしている。

その時の様子も陰ながら見ていたシロ達は

｢女って怖い……｣

と呟いたのだった。

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