【鬼灯の冷徹】子狐こんこん肆

子狐と鬼灯様のペースがあります。 ページ6

貸した本を受け取り、帰る事を告げた鬼灯にAはすかさず近くまで送ると申し出た。

｢じゃあ行ってくるね｣

桃太郎達に伝えて一緒に店を出たAに

｢ちょっと…！｣と追いかけて行こうとする白澤をリリスは止めた。


｢邪魔しちゃヤボよ。子狐ちゃんの悲しむ顔見たくないでしょ？｣









一緒に夜道を歩くAは｢騒がしくてすみませんでした｣と謝った。

｢いえ、あの人達が勝手に言っていた事ですし｣

静かに二人で歩く空間でAは




どう考えても鬼灯様が恋人らしい事をする想像がつかない。




二人はいつかは夫婦になるのだ

小さい子のおままごとなんかじゃない。

『そういう事』もいつかはある。

Aも遊び人の白澤と暮らしている為、

男女のそういうのには疎くはない。

しかし、どうも自分が鬼灯と恋人や夫婦らしい行為を行う想像ができずにいた。


｢あっ！｣

考えこんでいたAは足元の大きな石に気づかず、躓いて身体が前に倒れていく。

それをすぐに鬼灯が手を掴んで引っ張り

Aの体が背中から鬼灯の腕の中へと収まった。


｢大丈夫ですか？また怪我しますよ｣

｢あ…ありがとうございます｣


久しぶりに間近で感じた鬼灯の匂いに

Aの心拍数が上がっていき、

熱すぎる全身に明日の我慢大会、入賞出来るんじゃないかと余計な考えも浮かんでしまう。


｢暗いんですから足元に気をつけて下さい。

見送りもここで大丈夫です｣

鬼灯はAから離れようとした時、グッと着物の袖が掴まれた。

見下ろすとAの首は月明かりに照らされて真っ赤に染まりあげている。


｢も、もう少しこのままじゃダメですか…｣

｢…いいですよ｣


ほんの少しだけ、鬼灯の腕にも力が入った事は

いっぱいいっぱいのAが気づくはずはなかった。









寝る前、鬼灯は机で小判から貰った写真を眺めていた。


『どれがいいですか？』

『こんなので誤魔化せると思ってるんですか』


小判が広げた中にある笑顔のAの写真が目に入り、手に取る。

他にも二人が映っている写真をいくつか手中に収めた。


『…次余計な事したら剥製として美術館に寄贈しますよ』







｢明日も早いですし、寝ますか｣

鬼灯はAの写真を大事に手帳に挟むと

電気を消して布団へと潜った。




✱おまけ✱


暑さ我慢大会で着物を着込んだAは早々にリタイアした。


｢写真撮ってない！！｣

｢Aが着物の時鬼灯様テンション違うよな｣

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