【鬼灯の冷徹】子狐こんこん肆

子狐、誘拐されました。 ページ43

亡者を全て捕まえ、

｢後の事はお願いします。急用があるので｣

唐瓜に後処理を頼み、急ぐ鬼灯をシロ達は何事だと追いかける。


｢鬼灯様そんなに急いでどうしたの？｣

｢急いでるのがわかってるなら引き止めるなよ｣

ルリオに叱咤されるシロに鬼灯は


｢Aさんが誘拐されたんです｣


と伝えると数秒黙った後に

｢ええええええ！！！｣

と3匹は声を上げる。

｢鬼灯様亡者捕まえてる場合じゃないじゃん！｣

｢一応責任者ですし、後処理でその場にいた方が良いこともありますし

すぐに行っても国境を越える事件だから手続きでAさんの所に辿り着くまで時間がかかるんですよ｣


小さく


｢いい準備運動になりましたし｣


呟いた鬼灯に先程ハッカイの突進を止めたのを思い出したシロ達は血の気が引いていく。


｢なんか…誘拐犯が可哀想に思えてきた…｣

｢今の鬼灯様なら建物一つ破壊するんじゃね…？｣

｢まあ…自業自得だし…｣









｢い、や、だ｣

椅子に座りムスッとした表情で浩然に渡されたドレスカタログを突き返す。


数時間前、自宅の畑で浩然と金で釣られたその友人達に捕まったA

こっそり自宅の屋敷の一室に押し込めたAを浩然はあの手この手で結婚を説得していた。

そんな様子を友人達も呆れて眺めている。


｢私婚約者がいるから結婚できません｣

｢それもどうせ無理矢理なんだろ？

日本の恋愛漫画だと照れ隠し故に冷たくしたりと逆の行動をするみたいじゃん｣

｢それは作り物だから許されるの。そんなの信じる人はヤバい奴だよ｣



あ、ヤバい奴なのか。



とAと友人達は内心思ったが、口には出さなかった。

初めは自分を好いてくれる人と結婚した方が良いのかなと思っていたAも話せば話す程

浩然に対して｢こいつと結婚は生理的に無理｣と意思が固くなっていく。


やっぱり白無垢がいいな…

鬼灯と一緒に見た事のある白無垢のカタログを思い出し、

デザインが可愛かったんだよな…

と思いを馳せ、帰らなければと決意した。


Aは部屋にあった物を手当り次第に浩然達に投げつけ、相手が怯んだ隙に窓を開けて部屋から抜け出した。

窓の先はベランダなど無く、地面まで数十メートルの高い建物だ。

壁の僅かな突起に足をかけ、壁を伝って逃げ出そうと移動する。

樋まで辿り着ついて掴まったAがそこから下に降りようとしがみついた時だった。


｢うあああ！何してんだよ！！｣


焦る桃太郎の声が聞こえた。

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